第2話 カオス上等!ヤンキー1年生の日々(2)




「凛道さん凄いよな!元、龍星軍の縄張りを支配して奴らを凹って奪い返すだけじゃなくて~!」


「警察に引き渡して、解散させちまったんだもんなー」


「これで、飛翔連合も、活動しにくくなるってよー!」


「すべて計算済みか~!?こえぇー!」




(違うよっ!)





否定したいけど、我慢する。


だって、彼らが話しているのは不良少年の話。


それも、伝説の最強暴走族と言われた『龍星軍』の4代目総長の話!


地味で真面目っ子な私が、全く話さないクラスのヤンキー風の男子達の話に割り込むのはおかしい。





(「それ、ちがうよ。」なんて、修正かければ、ますます怪しまれるし~!)




「おまけに凛道君、警察を、もてあそんだらしいぜ?」


「知ってる!少年安全課最強のボス、藤原虎次郎相手に勝ち逃げしたんだよな!?」


「フジバラさんが、よそから応援呼んだのに、けっきょく手ぶらで帰らせたからなぁ~」


「殺しのバラさんのメンツ丸つぶれ!いい気味だぜ~!」


「マジ、凛道君最高だぜ!やること派手で、カッコいいよなー!?」


「バラさんにもついに、ライバル出現ってか!?」



(ライバルじゃねぇーよ!)





ミシッと・・・筆箱を持つ手に力が入る。


好き勝手なことを言う男子共にイライラする。


どうも世間では、私が龍星軍を復活させ、邪魔なチームを崩し、警察に宣戦布告したということになってるらしい。





「でもさー4代目総長、集会の夜以来、行方不明だってなー?」


「らしいぜ。パクられてはないらしいけど、一体、どこ行ったんだろうな~」



(すぐ側にいるよ。)





初デビューの夜以来、私は瑞希お兄ちゃんのところに行っていない。


行けない理由もあったけど、元々、人目につかないようにしていたから、行方不明扱いになっているようだった。




「きっと凛道君のことだからさ、新たな野望を抱いて準備してんじゃねぇーの!?」


「やべー!マジお会いしてぇな~」


「そういや、D組の奴が、撮影に成功したって言ってたぜ!?見に行くか?」


「マジ!?俺、送ってもらおうかな~彼女がさ、見たい見たいってうるさくてよ~探してんだ。」


「えー?やめとけよ。女取られちまうぜ~」


「馬鹿!不細工だから、顔隠してるんだろう、凛道さんは~?問題ねぇーし!」




(なっ!?)



誰が不細工!?





(地味だけど、不細工はないでしょう!?)



〔★凛のツッコミが止まらない★〕





まさか本人が斜め後ろで、スカートをはいて座ってるとは思わない奴らは好き勝手を言う。





「まぁ、初代メンバーはモデル並みの面の良さだからな~布で顔隠せって命令もされるよなー?」


「ぷっ!百鬼さんは、ワイルドな野獣系だろう~?」


「あはははは!だよなー?良い顔ではあるけどな~」


「先輩が後輩に顔隠せって、どんだけ不細工よー!顔共々、活躍が気になるわ~」



(この野郎っ・・・・!!)






ゲラゲラ笑う奴らに、顔の筋肉が引きつる。


どうやら、会有の不細工に、顔を隠せと言われて隠しているという噂も流れているらしい。


しょせん噂。


されど噂。


私が凛道蓮であることは秘密だけど。






(どこまで我慢すればいいのよ・・・!?)






どこへ行っても聞こえてくる侮辱に、精神疲労が半端ない。



〔★体に悪い環境だった★〕




悪口に耐える私に、そんなことを知らない友達2人が会話を進める。




「朝一で数学とか、ついてないよね~あてられるってわかってても、若松先生、急にあてるから心臓に悪いよ!」


「わかるわかる!今日、私のあてられる番じゃなくてよかった!」


「そういえば凛ちゃん、今日あてられる日じゃない?」


「え!?あ、そうだったね・・・」




その言葉で、聞き耳タイムは終了する。


雑念(?)を払い、今を見つめる。


宿題へと目を向ける。




(あの先生、1日だったら1番から、20日だったら20番の出席番号の生徒からあてるもんね~)





不運にも、私はあてられる番号だ。


念のため、1限目の数学の問題を見直す。




(うん、私があてられる問題、ちゃんと解けてる分だ。)




あてられても、答えられないはない。


間違えても怒られないけど、恥ずかしいので、自信のない問題じゃなくてよかったと思う。







「凛ちゃん、大丈夫?よかったら、私と答え合わせする~?」


「いいよ、マキちゃん。大丈夫そうだから。」




「へぇ~さすが、菅原さんだねー!全部埋まってるな~」


「え?」





軽い声に合わせ、私の周りが暗くなる。


誰かが、私の背後から覗き込んでいる。




(誰!?)




思わず振り返れば、





「あ!?飯塚君・・・?」


「おっはー、菅原さん。」





いたのは、同じクラスの男子。


それもただのクラスメートではない。




「きゃぁ~愛抱夢(アダム)君よ!」


「飯塚愛抱夢(アダム)君!」


「今日もカッコいい~!」





彼の名前は飯塚愛抱夢(アダム)。


キラキラネームを持つ、正真正銘の日本人。


とてもお金持ちの家の子らしい。


性格もイマドキで、常に人に囲まれている。


クラスでも人気者。





「今日もカッコいいよね~」


「ピアス、赤色に変えてるー!」


「イケメンは何しても、イケメンよね!」



(そう・・・・・クラスでも、人気のイケメンなんだけど・・・)





どちらかというと、学校でも有名な男子。


なんか、脱稿で一番のイケメンだって。





「り、凛ちゃん!飯塚君だよ!」


「どうしよう~近くで見るの初めて・・・!」


「ウン、ホントウダネ。」





友達2人も盛り上がるが、どうでもいい。





(男前だか何だか知らないけど、瑞希お兄ちゃんの方がかっこいいわよ・・・!)





〔★凛は関心がなかった★〕





改めて、瑞希お兄ちゃんの違いを考えてから相手を見る。


チャラオとヤンキーの中間みたいな奴で、本当に顔は良い。


運動神経もいいらしく、時々運動部の助っ人を頼まれている。


そんな男が、なぜ私に話しかけてきたのか。






(用件はわかってる。)





「お・・・おはよう、飯塚君。」


「うんうん、おはよぉ~!実はさ、菅原さんにお願いがあるんだけどー」





挨拶を済ませば、相手はニコニコしながら言った。





「今日の数学の宿題、見せてくれねぇーかな?俺、あてられそうなんだよね~」


(そうだと思ったよ、ボケ。)




〔★答え写しの要請だった★〕





別に、宿題を見せることはかまわない。


私も、宿題のプリントを忘れ、友達にあてられそうなところだけ、見せてもらってしのいだことがある。


緊急事態もあるのでお互い様。



でも・・・・・・・・世の中には、宿題を見せていい人と悪い人がいる。



(この飯塚の場合、見せたくない奴なのよね・・・・!)



だから毎回、ささやかな抵抗をするのだけど―――――・・・・



「わ・・・私でいいのかな?他にも頭いい人が~」


「菅原さんでいいんだって!字はきれいだし、わかりやすいし~」



(粘るな、こいつ!)




〔★あまり効果はなかった★〕






まるで自分が弱者の様に、すがりながら飯塚は言うのだ。




「お願いだよぉ~俺、菅原さんじゃなきゃダメなんだよ!ねぇ、この通り!一生のお願いっ!」


「い、飯塚君。」




甘えの混じった声で言う男子。


それを聞いて私は思う。





(お前、先週も一生のお願いって言ったよな!?)





お前の一生は何回あるんだよ!?





〔★今日の凛は、心のツッコミが多い★〕








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