第5話

「あ!胸ね!うんうんいいよ!」


人魚は俺の目的を理解すると貝殻に包まれた胸を突き出した。これは、揉んでいいもいいサインなのだろうか。なんかエロい。これは少年誌には載せられないエロさだ。


「……いや、やっぱりいいです」


「えぇ!?急になんで?」


「いや、なんか。気持ち的に萎えた。なんか揉んで揉んでアピールされてもなんか違うし。なんか美人局感があるし。もう一生童貞でいいや⋯⋯」


もう一度言うが、美人局感が半端ないし。なんかもう初対面で胸を揉ませてくれる人(人魚)って普通じゃないよな。まあ初対面で胸を揉ませろって言っている俺が言えた話じゃないが。


「ええ、なんと言うか初対面で胸をもませろって言っている君が言えたことじゃないと思うんだけど⋯⋯てか童貞なんだね」


「……」


それを言うかね。後ろめたいことを。オブラートに包んで欲しいことを。もうメンタルにクリティカルヒットだよ。


「……」


「……」


妙な間が出来てしまった。あ、辛い。はあ、なんて日だ。なんて出会いだ。そして童貞は俺のアイデンティティです。



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