第4話 若者の諸刃の剣たる要素を見抜いた元教師
あの大槻君とは、岡本君よりは幾分若く、古村君よりは何歳か年長であるが、若いうちからやり手の素質にあふれておったし、今くらいの活躍をする兆候なら、もう、よつ葉園に入ってきた時から、すでにして見受けられていた。
最初、あのクンはわしの若い頃、そうじゃのう、師範学校を出て間もない頃じゃから、拓弥もまだ生まれておらん頃じゃ。
20代のわし自身と、割によく似ているようにも思えておったのよ。
そうともなりゃあ、子どもらの受けも、悪いはずがない。
とりもわけても、年長の男子児童ら、な。あの職場では、どうしてもそのあたりへの対応がなぁ、おざなりとは言わんにせよ、マセガキと言っては何だが、思春期真っ盛りを行く男子らをうまく導いていける職員は、なぁ、特に女子には、ゼロではないがほとんどおらん、正直なところ。
そこへ来て、若くて元気で有能なやり手の、社交性にあふれる男子職員の大槻センセイの御登場じゃ。
武志に拓弥、君ら、考えてもみなさい。
元教師が教え子らを諭すように毅然とした口調で述べる老恩師の前に、彼らは一瞬たじろぎ、直立不動の姿勢にさえなりかけた。
老恩師を慕う教え子らを前に威厳を見せた東元園長は、さらに、話を続ける。
いいかな、若い保母らと、それに、わしよりは若いとはいえ、ベテランと言えば聞こえはええけど、子育ても終った年配の保母、これは山上さんに失礼な言い方であることは承知じゃけど、そんな者ばかりのところに、かの大槻センセイが大学を卒業してお越しになったわけじゃ。
そりゃあ年長の男子らは、そっちになびくわ。
大槻君も、そこは大いに得意なものであるからな。前任者の森川先生も、大槻君のそのあたりへの対応は、十二分に評価しておった。
わしだって、大槻君の若い頃の活躍ぶり、見ていてほれぼれしたほどじゃ。
しかし、あのクンの素養にはどうも、諸刃の剣の要素があることに、わしは程なく気づかされた。
あの調子で行けば、あの青年、いずれどこかで頭を打ちはしないか、とな。
そこまで述べて東元園長は、目の前のグラスの中にある水を幾分口に含んだ。
少し間をおいて、老教師は教え子たちに再度語り始める。
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