第3話 やはり、予想通りのことが起きていますね。
古村氏と東理事長の話を傍で聞いた岡本拓弥氏は、彼らの会話にいささかならぬ違和感を抱かないわけではなかった。
古村氏がよつ葉園の事務員に転職して後も年に何度かはお互い会っていたのだが、東氏が園長を退任してこの方、正味で3年、特によつ葉園の内情などを聞かされることがなかっただけに。
「フルちゃん、何それ、理事長の動向を、園長の大槻さんは把握されていないのか? そうだとすれば、しかし、どういう組織なら、おたくらのところは・・・」
いささか呆れがちに述べる先輩に、後輩がその事情を述べる。
「いやあ、岡さん。大槻は、先生が園長を退任されて自ら園長になってこの4月で4年目ですけど、前園長時代、それこそ東先生が園長をされていたときの、大槻いわく「停滞した」体制をどんどん変えておりましてね。それはまあいいですが、元園長の森川先生の話はしばしば出ておりますのに、東先生の園長在任時の話は、ほとんどと言っていいほど出ません。誰かが話題を出せば少しは出ますが、自分から積極的に話していくことは、まったくと言っても言い過ぎではないほど、ありませんね」
「まあ、前任者のやってきたことを否定とまでは言わないが、思いっきり変えて行こうとする後任者というのは、どの職場でも、どこの世界でもある話ではあるし、それだけ聞いても、私は別に驚かんけど・・・」
岡本氏は東園長がよつ葉園の園長を退任して以降この方3年間、年に何度かは会っていた。園長を退任しても理事にはとどまっており、程なくして前理事長の死去による退任を受けて理事長に就任していたこともあり、古村氏は郊外に移転したよつ葉園まで東理事を送迎する役割も負っていた。
とはいえ、両者が揃って恩師である東氏のもとを訪れたのは、この日が最初であった。岡本氏と古村氏はその3年間のうちに数度しか会っていなかったうえに、とりわけよつ葉園の話題が出たわけでもなかった。
岡本氏にとっては、東園長退任後のよつ葉園の状況についていくらかの情報を得られたのは、この時が実質的には初めてだったのである。
「東先生、やっぱり、私が予想した通りのことが起きているようですね・・・」
少し間をおいて、岡本氏は先ほどの弁を、このように述べてつなげた。
目の前の珈琲を飲み干した東氏が、思うところを述べ始める。
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