第12話

事件発生から3時間後のことであった。


ニュースを聞いたかずひこのおじは、大急ぎでかずひこの家へ電話をかけた。


電話の応対は、まゆみがしていた。


まゆみは、ものすごく怒った声でかずひこのおじに言うた。


「もしもし、主人はさっき家を出て職場へ向かったけど…どういう用件で電話をしたのよ!?」


かずひこのおじは、ものすごくしんどい声で『かずひこと話がしたい…』と言うた。


ブチ切れたまゆみは、ものすごく怒った声で言うた。


「もしもし、もとはと言えばあんたが寮生活がイヤやと言うた男子生徒たちを甘やかしていたから手痛いしっぺ返しを喰らったのでしょ!!ケーサツから事情聴取に来てくださいと言われたら素直に受けなさい!!…はぐいたらしいクソジジイね!!」


(ガチャーン!!)


まゆみは、ものすごくイラついた表情でキーッとなった後、両手でぐしゃぐしゃに髪の毛をかきむしった。


そこへ、かずひこが眠そうな表情で居間にやって来た。


まゆみはかずひこに喰ってかかった。


「あなた!!」

「なんだよぅ。」

「あなた!!アタシはものすごくイラついているのよ!!」

「一体、なにがあったというのだ?」

「あんた!!眠そうな声で言わないでよ!!」

「なに起こってるの?」

「あんた!!いつまでもおじさまの言いなりになっていたら、ダメになると繰り返して言うたのよ!!それなのに、どうしておじさまの頼みをほいほいと引き受けるのよ!!」

「おい、待ってくれぇ〜」

「あなた!!今朝方のニュース番組を見ていないのね!!」

「ニュース?」

「あなた!!おじさまがお世話をしていた寮生の男子生徒6人が、居酒屋で亡くなったのよ!!」


まゆみからことの次第を聞いたかずひこは、もののキョトンとした表情を浮かべていた。


まゆみは、よりし烈な声でかずひこに言うた。


「あなた!!」

「なんだよぅ〜」

「奈美子の進路のとおじさまとどっちが大事だと思っているのよ!!」

「どっちが大事って…」

「あなた!!」

「なんだよぅ〜」

「あなたは、ウエニシの家の奥さまに奈美子を引き取る際に交わしたヤクソクごとをきれいに忘れているみわよ!!」

「忘れてなんかいないよぅ〜」


かずひこは、ますますけだるい表情を浮かべながら言うた。


まゆみはものすごくイラついた表情でかずひこに言うた。


「あなた!!奈美子は3月に公立高校の受験を迎えるのよ!!奈美子の同級生たちは必死になって追い込み勉強をしていて苦しんでいるのよ!!父親だったらこまごまと動きなさいよ!!」

「だから、どのようにして動けと言うんだよぉ。」

「あなた!!」

「だから、オレにどうせいと言うんだよぉ〜」

「アタシは奈美子に同級生たちと同じコースへ進んでほしいから言よんよ!!それなのにあんたは、どうしてアタシの気持ちを分かろうとしないのよ!!」


まゆみは、かずひこに対して奈美子が高校受験勉強に向くようにしてほしいと繰り返して要求した。


しかし、かずひこ自身はどのようにしていいのか分からずにコンワクした。


まゆみが言うてることはムジュンしている…


奈美子が高校受験勉強に向いてゆかんと言うけど…


どうやって向かせろというねん…


オレにだって、できることとでけんことがあるんだよぉ…


かずひこ自身は、奈美子と向き合おうと思っていたが、ここへ来てめんどうくさいと思うようになった。


かずひこは、ダラクの一途をたどろうとしていた。


ところ変わって、三木町平木の私立高校の敷地にあるトイレにて…


この時、かずひこのおじが学校の事情聴取を受けていた。


かずひこのおじは、緊急の理事会で亡くなった男子生徒7人の処分が出るまでの間、校内にとどまっていた。


この時であった。


派手なシャツを着た陽介がやくざの男たち8人を連れてかずひこのおじのもとへやって来た。


陽介とやくざの男たち8人は、かずひこのおじを連れて校内のトイレへ連れて行った。


陽介は、かずひこのおじに貸した大金をいつになったら返すのだと凄んだ。


「オラオドレ!!オドレはいつになったらうちの組から借り入れた5000万を返すんや!!」

「ああ、こらえてくれぇ、こらえてくれぇこの通りや…」

「ふざけとんかオドレは!!」

「ふざけてなんかいないよぉ〜」


かずひこのおじは、必死になって許し乞いをした。


ブチ切れた陽介は、チタン加工の出刃包丁を出してかずひこのおじをイカクした。


「ヒィィィィィィィィィィィ!!」


陽介は、出刃包丁でかずひこのおじをイカクしながらカネ返せと凄んだ。


「オラオドレ!!オドレはうちの組だけではなく、他にも大口がよぉけ(たくさん)あるみたいだな…総額は、30兆円みたいだな!!」

「ああ、こらえてくれぇ、この通りや…」

「オラオドレ!!」

「ヒィィィィィィィィィィィ…」

「オラ、はけ!!」

「はけって…」

「オドレがうちの組から借り入れた5000万の使い道をはけといよんや!!」

「ヒィィィィィィィィィィィ、た、助けてくれぇ…命だけは…」

「ほんなら、うちの組から借り入れた5000万の使い道を言え!!」


かずひこのおじは、陽介からの問いに対して、借入金の使い道を言おうとした。


しかし、陽介が持っているチタン加工の出刃包丁が怖いので、うまく言えずに震えていた。


「つ、つ、つ、つ…」

「コラジジィ!!オドレはオレたちをグロウしとんか!?」

「ぐ、グロウなんかしていないよ。」

「オドレふざけるのもたいがいにせえや!!」

「ふざけてなんかいないよぉ…」

「ほんならはけ!!」

「えっ?」

「うちの組から借り入れた5000万の使い道をはけといよんのが聞こえんのか!?」

「わ、わかった…言う、言う…」


かずひこのおじは、陽介たちに借り入れた5000万円の使い道を事業のために使ったと言うた。


陽介は、怒った声でかずひこのおじに言うた。


「オラオドレ!!」

「本当だよぉ…うちの会社は火の車状態なんだよぅ…5000万がなかったら、従業員さんたちにお給料を払うことができなくなるのだよ〜」


かずひこのおじの説明に対して、陽介は『ふざけとんかオドレは!!』と怒鳴り声をあげたあとこう言うた。


「あのな、オレたちはオドレのクソたわけたいいわけを何べんも聞いたけど、もうガマンの限度を大きく超えているのだよ!!オドレはオレたちの組から借り入れた5000万を返す意思がないことがわかった…だからここでオトシマエをつけてもらうからな!!」


(ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!)


かずひこのおじは、やくざの男たちからかわるがわるに殴られた。


それから20分後であった。


かずひこのおじはぐったりした後、口から大量のアワを吹いた。


それと同時に、呼吸が止まった。


やくざの男たちは、かずひこのおじの遺体を運び出した後その場から逃げ出した。


かずひこのおじの遺体は、さぬき市の山奥にある雑木林に埋められた。


その後、陽介たちは逃走した。


その日の夜10時過ぎのことであった。


場所は、まんのう町帆山にある陽介が入り浸りになっているやくざの事務所にて…


やくざの組長とナンバーツーの男が密談をしていた時であった。


見習いの男がものすごい血相で組長の部屋に入って来た。


「アニキ!!」

「どないした!?」

「アニキ大変です!!ウエニシのクソガキが上納金ゼニを持ち出して逃げました!!」

「なんやて!!探せ!!ウエニシのクソガキを探せ!!ウエニシのクソガキは見つけ次第いて回してコンクリ詰めや!!」


やくざの子分たちは、組長からの命令で陽介を探しに出た。


事務所から逃げ出した陽介は、上納金くみのかねを持って県道丸亀三好線を通って徳島県側へ逃げた後に行方不明になった。


ここより、最も恐ろしい悲劇の幕が上がった。

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