第23話 ガラシス邸奴隷誘拐監禁事件
翌日、僕らはまず王都のギルドへ向かった。
旅で貯めた魔石の換金とギルドカード更新のためだが、同行しているファナの討伐クエストをサポートすることも計画している。
クエスト前に、療養中のアリーサの祖父のお見舞いとパイヴィにガラシス邸奴隷誘拐監禁事件の報告を終えた後になるが。
王都のギルドは<オゼンセ>とは比べ物にならないほど建物は大きく、人も多い。依頼ボードには収まりきれないくらいのクエストが張り出され、ボード前は大混雑している。
その中を軽い身のこなしで移動しながら、貼り出された依頼書を吟味しているファナがいる。
アリーサはというと、受付の端に設けられた換金コーナーで魔石やドロップアイテムの換金をしている。受付の女性が裏へと駆けていく姿が見える。<コングベアの魔石>の入った魔石袋を開封したのだろう。
僕はニィズの握った手をそっと放し、受付の石版に手を当てプラエトリアニカードの更新をしているところだ。
カード更新を終え、悲しそうに見上げるニィズの差し出す手を握る。
<隷属の首輪>も外れ、さらにご機嫌になったニィズだが問題がある。
ニィズの故郷の場所が未だわからない――。
本人に聞いても暮らしていた場所から出たことがないらしく、運悪く近くの森で遊んでいるところを何者かに狙われ拐われたという。その後、奴隷商に売られ、あの野盗らに買われたらしい。
衛兵に預けることも検討したが、詰め所に行くと僕の手を握るニィズの手に一層力が入り、絶対に離れないという意志を感じあきらめた。
なので、突然ですが妹(仮)にすることにしました――。
僕とニィズは2人の用事が終わるまで受付前に設けられた椅子に座って待つことにした。<隷属の首輪>が外れてもマフラーは外さないニィズが、ストローで果実のジュースをチューゥと吸って僕に笑顔を向ける。
アルガーポ・ガラシスだが、その日のうちに捕まった――。
ファナの友達のリズリーを救出後、リズリーを伴い貴族らが住むエリアの入り口にある通行検査所へ事の次第を報告に行った。そこで必死にアルガーポ・ガラシス邸への訪問を許可してくれるよう交渉していたアリーサと合流し、リズリーの証言をもとに衛兵らによるアルガーポ・ガラシス邸の地下の捜索が行われた。
リズリーの証言通り、隠し扉を抜けた通路の先で奴隷たちが監禁されている部屋を発見。捜索願いが出されている貴族の娘がいたことで、誘拐監禁事件として調査されることとなった。
ガラシスは大人しくお縄に着いた――。
当然、衛兵たちはいつものようにガラシスの高圧的権力によりもみ消されるのだろうと思っていたようで、意外にも罪を認め、強制連行にも素直に応じたガラシスを目の当たりにして戸惑いを隠せないでいた。
――これにはもちろん裏がある。
ガラシスを圧倒的な力でねじ伏せたためか、オークの血が流れるためか<従魔契約>のスキルが発動したのだ。ルナとの相談によりガラシスを僕の従魔にする結論へと至った。この契約により、僕の命令には絶対服従となったガラシスは、全てを自白、おとなしく王国の法による裁きを受けざるを得なくなったのである。
ギルドを後にし、アリーサたちの祖父が療養中の病院までの道のりをファナとアリーサの姉妹先導で歩いている。
ファナの歳は十四。ショートカットで髪の色はアリーサと同じ銀髪。背丈は横を歩くアリーサより少し高いがさほど変わらない。目つきは母のアクリナさん似でどこか油断した感じのくっきり二重の垂れ目だ。
軽装鎧の下には、上半身はベージュのニット、下半身は黒のフレアキュロットに太ももが眩しい黒のニーソックスで活発さと清楚さを併せ持つ感じでまとめている。つまるところアリーサに負けず劣らずかなりの美少女ということだ。
僕はニィズと手をつなぎお話しながらこの美少女2人の後をついていく――。
◆ヘルプ
《星詠み》
『目』に関するスキル。《神眼》《魔眼》《心眼》を合成し昇華させたスキルで未来予測が可能となる。
〈神眼〉「診る」「看る」:病気や状態異常の診断と治療法がわかる。
〈魔眼〉「見る」「観る」:鑑定。呪いの診断。呪詛と解呪。即死、認識阻害、暗視。
〈心眼〉「視る」:地形や建物の間取り、気配、アイテムや宝の位置などをスキャンソナーする。
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