第12話 アリーサ・エフィン・フィッツローズ

 若くしてフィッツローズ家を継いだ女当主、現在16歳。

 美しい銀髪碧眼の持ち主のヒューマンで、二つ名は「盾姫(タテヒメ)」。身の丈以上の巨大な銀の盾を背負っていることからそう呼ばれる。しかし、没落貴族となった今では、分不相応な盾を亀の甲羅と皮肉られ「亀姫」と揶揄する者もいる。

 物静かで感情をあまり表に出さない性格で、没落したとはいえ誇りを失わず凛とした佇まいと言動はギルドからの信頼も厚い。

 御家立て直しが何よりも最優先であり、暇さえあればクエストを受けその資金を稼いでいる。


 先々代の領主、すなわちアリーサの祖父は、領地財産を謀略によって騙し取られ落胆喪心、息子に後を託し隠居する。跡を継いだのはアリーサの父親だったが、会議のため王都へ向う道中にサーベルウォルフの群れに襲われ落命。領主の護衛には十数名の領主直属の精鋭が供をしていて、いくら数的不利があろうとサーベルウォルフの群れなどに蹂躙されるほど柔ではない者たちだったというがほとんどの者が死亡、そして数名が行方不明となっている。この行方不明者の中にアリーサの兄もいた。息子と孫の死を知ったアリーサの祖父は自責の念に駆られ廃人となり、現在は王都の施設で療養中だという。アリーサの母親も施設に預けられている祖父の面倒を見るため、二人の娘を連れ領地を出て王都で暮らしている。

 暫定的に跡を継ぐこととなったアリーサはたった一人、没落後与えられたこの辺境と言われる地で御家再興のため日々活動しているのだ。


 メイン職業はガーディアン《守護騎士》で、サブ職業は《料理人》。戦闘スタイルは《片手剣》。スキルは『菜園』『採掘』『採取』『農耕』と、サブ職業は《料理人》を意識して取得したスキルが多い。

 称号持ちで『一ツ星料理人』があり、さらにユニークスキルとエクストラも持っているらしい。知りたければ、《鑑定》スキルで覗いてみるといいと言われて鑑定してみたが、名や身分、メイン、サブ職業は見ることができたが、その2つのスキルは見ることができなかった。聞くと、《鑑定》スキルでは王侯貴族のステータスは、何かしらのロックが掛かっており絶対に覗き見ることはできないということ。確かに王様が全個人情報を晒しながら各地を訪問するのはあまりに危険過ぎる。

 ただし、このことはルナとも相談して秘密にしておこうということになったのだが、僕のスキル《星詠み》は特別なようで、貴族アリーサのステータスは隅々までマルっと見えてしまっていた……。

 神の恩寵というダンジョンを攻略した領主にしか与えられない特別なスキルがあり、この恩恵はプラエトリアニ全員に領主の加護として付与される。これはアリーサ本人も知らないことだが、アリーサには『不撓不屈』という神の恩寵が授けられるようだ。アリーサの頑張りを神も見ていると言うことだ。



ステータス

 名前:アリーサ・エフィン・フィッツローズ

 種族:ヒューマン

 身分:貴族

 爵位:辺境騎士伯

 メイン職業:ガーディアン《守護騎士》

 サブ職業:料理人

 戦闘スタイル:片手剣、重鎧と盾を装備。タンクとしてヘイトをコントロールする。

 △恩寵加護:(不撓不屈)

 称号:一ツ星料理人

 魔法:なし

 △ユニークスキル:金城鉄壁

 △エクストラスキル:(神の舌)

 その他スキル:『調理Lv.7』『目利きLv.3』『菜園Lv.3』『採掘Lv.2』『採取Lv.3』『農耕Lv.3』『毒感知Lv.1』『探求Lv.3』

 耐性:物理攻撃耐性Lv.5、魔法攻撃耐性Lv.3、痛覚耐性Lv.3、毒耐性Lv.2、麻痺耐性Lv.1、火属性耐性Lv.2


※()内は《星詠み》で見えた《鑑定》では見えないスキル、またはいずれ取得できるスキル。△は《鑑定》では見えない。



 ステータスを知って思うのは、アリーサもまた、継承前の僕と同じように不遇だということ。家の立て直しのためには多くのスキルポイントやクランポイントが必要なのに、ガーディアン《守護騎士》なため戦果報酬の高い討伐クエストも仲間なしのソロでは厳しい。たまにツノウサギなどの弱い魔物が盾に突っ込んできて失神することがあり、それにとどめを刺して討伐することもあるが稀なことで、弱い魔物を一匹倒して依頼達成するクエストなどまずない。運良くドロップした肉を美味しくいただくだけだそうだ。そういうわけで、採取や採掘の依頼を受けることが多いとのことだった。

 

 《星詠み》で見えたユニークスキル『神の舌』は、ルナによると一流の料理人やソムリエであれば喉から手が出るほど欲しいスキルだそうで、御家再興のためにはなくてもいいスキルのように思える。しかし、アリーサは前向きな女性だ。戦闘に不向きな自身を鑑みて『調理』『菜園』『採取』を取得し、稼いだスキルポイントをこれらのスキルに割り振っている。理由を聞くと、この先たくさん集まるであろうプラエトリアニたちがヘトヘトに疲れてクエストから帰ってきたときに、美味しい料理をお腹いっぱいになるまで食べさせてあげたいからだそうだ。なるほど、「まず胃袋をつかめ」というアレだ。かく言う僕もアリーサの手料理に毎日舌鼓を打たせてもらっている。ふむ、これは確実に強い結束力が生まれることをここに断言する。



【ガーディアン《守護騎士》】

 敵を引きつける多くの特技をもち、一定時間ダメージ無効化などの防御に特化した職業。盾を利用した特技が多く、盾がレアなものになるほど特技の性能が高くなる。

 剣を装備できるが攻撃系の技は使えず、技はスキル付き武器(レア)に頼らざるを得ない。

 アリーサは、家宝の剣の固有スキル「フラムマスパーダ」が最大の攻撃手段となる。


【神の舌】

 口にした料理に使われている具材や香辛料など明確に識別しレシピに起こせる力。『調理』スキルがあれば一度食べた料理を再現することが可能。

 『調理Lv.3』『目利きLv.3』『採取Lv.3』『探求Lv.3』で取得可能となる称号『一ツ星料理人』。全Lv.5で『二ツ星料理人』、全Lv.7で『三ツ星料理人』とスキルレベルによって解放されていく。


【余談】

 11人ものスキルを継承してきたハルトだが、唯一料理系のスキルは誰一人として取得しておらず、継承のけの字もない。旅で野宿したときに作る飯は11人全員マズかったと言う(ルナ談)。11人が口を揃えて言っていたのは『ヘタなことはするな、塩を振れ』だ。ハルトも例外ではない。

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