第4話 町へ
眼の前にはコングベアが立ち上がり、長い両腕を挙げて僕を威嚇してくる。
体長は4メートル弱といったところ。
「グゥオガァァァァッ! ウホウホウホウホー!」
ドラミングしながら咆哮を上げたコングベアが、四足歩行になり、唸り声とよだれを撒き散らし、こちらへ向って突進してくる。
以前の僕なら命をかけなければならなかった魔物。しかし、今戦おうとしている同個体はすでに3体目、前のより少し小さい個体だ。
左からコングベアの重たそうな大振りの一撃が来る!
『いらないと思うけど、《物理防御<大>》と《体幹強化<極>》はすでに発動させてあるわ!』
「さすが、ルナ!」
僕は一呼吸入れると、左から来る一撃を気にせず、右足を高く大きく速く振り抜く!
「上段廻し蹴り!」
コングベアの拳は僕には届かない。一撃必倒のハイキックは首の骨を粉砕する。コングベアの巨体は前のめりにズシンと力なく沈み落ち大地を揺らした。
『なんだかあっけないわね』
「まあ、これだけの力があればね。スキルの制御にも慣れてきたけど、手加減するほうが難しいよ」
僕の戦闘スタイルは武術に魔術を織り交ぜた格闘術。武器を使いこなすスキルを持っていなかったため、万人が持つ共通スキルの体術をひたすら磨くしかなかった。ドS師匠のもとで厳しく過酷な指導を受けたはずだったのに、残念ながらあの魔人にはまったく通用しなかった。
しかし今は、継承によって身体能力は大きく向上し、磨いた技の数々も威力が上乗せされ、さらに初代の戦闘スタイルも『空手』という武術だったらしく技のキレも研ぎ澄まされてもきている。
歴代たちが使用してきた武器も使うことができるが、体術は自分の努力で身につけたもの。そう簡単に捨てるわけにはいかない。こだわりだ。
「これくらいでいいかな。日が沈む前に町へ行ってアイテムを買い取ってもらわないと」
入手したコングベアの魔石と肉を【スキルカード《魔物解体 Lv.2》】を使って入手し、ドロップアイテムは【スキルカード《収納袋 Lv.1》】で回収する。そう、これが僕の【ユニークスキル《カードキャプター》】だ。解体も収納もカードを対象にかざすだけでいいのですごく便利だ。ちなみにコングベアのドロップしたスキルカードは《狂化 Lv.1》。倒した3体のうち2体がドロップしたのでカードを重ねて《狂化 Lv.2》となっている。《狂化》は、身体強化<大>の有用なスキルだが、理性を失うとても危険なものなのでおいそれと使えない。
わかってはいるが魔物からドロップするカードには使えないスキルが多い。《狂化》もそうだが、《尾撃》や《食い千切り》なども人族の僕にはあまり有用なスキルではない。
使わないカードや使わなくなった無意味なカードにも使い道があるのだろうか?
(ルナは、なにか知ってる?)
『ふっふーん! そこは心配ご無用よ。使わなくなったカードにもちゃんと使い道はあるわ。【スキルカード《カード解体》】を使えば、カードレベルに応じてSP(スキルポイント)に交換することができるの。SPの使い道はいろいろあるけど……』
「ちょっと待って、ルナ。【スキルカード《カード解体》】を持ってない」
『あら。じゃあ、【スキルカード《カード解体》】を入手したときに詳しく説明するわね』
となると、気にせず魔物は倒していいのか。いや、知性を持った人型の魔物を優先して倒す方が有用なスキルカードが手に入りそうだ。実際、魔人がドロップした《魔眼》と、魔力を徐々に回復する《魔力再生 Lv.2》はとても有用なスキルだったし……。
魔物の処理を終え、《星詠み》を上空へ飛ばして地形を確認する。
「かなり町から離れてるな。
よし、日が落ちるまでには時間あるし、《星詠み》で目に付いた薬草を採取しながら町を目指すか!」
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