第2話 スキルカード
ものすごい魔力に包まれながら、僕は立っていた。
「魔力を落ち着かせなきゃ!」
師匠に教えてもらった基本中の基本『魔力制御』で自身の漏れ溢れる魔力を体内に抑え込む。
「ふぅ……」
僕は両手のひらを見る。
「なんだ、この力……。制御するのがやっとじゃないか」
尋常ではない魔力が、自分の中に存在しているのを感じる。
しかも、先程から魔人の攻撃を受けているのにもかかわらず、多少の衝撃はあるものの痛くも痒くもない。
ただ、自身に起こっている事象を整理しているところなので少し鬱陶しい。
顔をあげる僕と魔人との目が合う。
殴りかかってくる魔人の手首をつかむと、背負うようにして大地へと思いっきい叩きつける。
そのまま手首をひねり上げ、魔人の頭を膝で抑え、地に突っ伏す魔人の動きを封じる。
「ステータスオープン」
最初に目に飛び込んで来たのは、師匠のExスキルだった。
不思議と悲しみに襲われることはなかった。別にスキルを継承したせいで感情を失ったとかではなく、それ以上に僕の中にある『絆』を強く感じて心が暖かくなる。師匠から弟子へ代々受け継がれてきたスキルと想い。それが心臓をキュッとさせる。
僕のステータス欄に師匠のスキルがあるということは、僕にも使うことができるのか?
そうか、傷ついたときにいつもかけてくれていた師匠のスキル《スパティウムリーマ》が、僕を魔人の攻撃から護り、回復してくれているのか。でも、師匠の防護壁は魔人に簡単に破られたのにどうして? この防護壁の強度は師匠以上な気がするけど……。
とりあえず、もうこの魔人に圧倒されることはない。
よし、スキルの検証をこの魔人で試してみよう。
僕は魔人に目を落とすと、もがく魔人からヒョイッと距離をとる。
魔人はガバッと起き上がると咆哮のような奇声を上げ僕目掛けて飛びかかってくる。
「でも、まずは師匠の遺言からだよね!」
僕は拳に力を込め、向かってくる魔人の顔面を叩きつけるように思いっきり殴る。
カウンター気味に入った拳で魔人の身体が地を跳ねながら転がっていく。
立ち上がる魔人の顔は歪み、全身をよろめかせては体勢を立て直そうとする。
怒りで血走る目がこちらを睨んでくる。もはや魔人にニヤける余裕などなくなっている。容赦などしない。今度はこちらから突っ込んでいき、お構いなしにその顔面を何度も拳に力を込め殴り続ける。
勝負は決した。
最後の力を振り絞って立ち上がった魔人の足元はおぼつかない。ふらふらと魔人特有の殺傷欲に任せて向かってくる魔人に、僕はありったけの想いを込めてスキルを発動する!
とどめは師匠のスキルで――。
「師匠から継承したこのスキルで、この魔人に止めを刺します!
《スパティウムレフェクト》!」
……。
あれ? スキルが発動しない!?
やっぱり、僕には使えないスキルなのか……。
『スキルカードに使いたいスキルをセットアップして具現化するのよ!』
え? 何だ?
突然、耳元で話され、僕は大きく後ろへ跳んで距離を取る。
『スキルリンク
「え?」
『仕方ないわねえ! あたしの言う言葉を繰り返して。スキルリンク
「スキルリンク
『スキルカード【《スパティウムレフェクト》】』
「スキルカード【《スパティウムレフェクト》】!」
声の主に従って謎の呪文を唱えると、目の前にカードが現れた。
カードはキラキラと輝き、《スパティウムレフェクト》の文字とその効果が記されている。僕はその光を帯びたカードをつまんだ。
『オッケー! これでスキル名を叫んだらスキルが発動するわ』
「《スパティウムレフェクト》!」
僕は頷き、魔人に向けスキルを発動する。水晶のような輝きを放つ球体がスキル対象者の魔人を封じ込める。
師匠への感謝の気持ちを込めて拳をギュッと握りしめる。そして、師匠がやっていたように僕はその拳で魔人を封じ込めた球体を叩き割った――。
「師匠……、僕を拾ってくれて、そして育ててくれて、本当にありがとうございました!」
球体は僕の放った拳から徐々に亀裂を広げていき、青白い光を飛び散らして魔人もろとも弾けて消えた。
◆ヘルプ
《スパティウムレフェクト》
術者より弱い、または十分に弱らせた対象を見えない球体に封じ込め、その球体に衝撃を与えダメージを与える。その際、肉片を飛び散らしたり、血しぶきを上げたりはしない。球体に封じられ倒された対象者のドロップアイテムは100%で獲得できる。
《スパティウムリーマ》
傷ついた対象を物理、魔法攻撃から守る見えない球体の防護壁で覆い、球体内の生物の傷を徐々に癒す。高位レベルになると、防護壁は物理魔法攻撃無効となり、身体の欠損部分を再生させたり、死んで間もないモノなら蘇生したりもできるようになるが術者の力量によっては失敗することもある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます