転生者からスキルを継承したので没落貴族三姉妹の親衛隊やります
カタコリス
第1話 スキル継承
「ハルト、生きてるか?」
瀕死の僕は返事すらままならない。
「強ぇなこいつは……。俺たちには手に余るバケモンだ」
死闘の末、倒れてもはや動けない僕をかばうように強敵に立ちはだかる師匠。
「俺の代で決着をつけるつもりだったが、まだこんな桁外れな奴がいるとはな。
ったく、俺の本気がここまで通用しないのがマジで気に食わねえ……。
初代は本当に難儀な世界を転生先に選んだもんだぜ」
防戦一方――。
魔人の攻撃は、人族最強クラスの師匠でも致命傷をもらわないように防ぐのがやっと。動けない僕をかばいながらにしても師匠の本気が通用しない相手。それほどに魔人の力は凄まじい。しかも魔人は、師匠が僕のそばを離れられないことをわかっていてなぶり殺しを楽しんでいる。
僕のことは気にしないでと言っても師匠が耳を貸さないのはわかっている。
「くそがっ……!」
師匠はとうとう片膝をついてしまった。
僕のせいだ……。僕が弱いせいで師匠が死んでしまう……。
そんなのは嫌だ! 師匠、頼むから僕を置いて逃げてください!
もう指一本動かせない僕は、こちらを振り返る師匠に目で必死に訴える。
「弟子一人守ることができない師匠とは、格好悪すぎだ……。
ああ、お前との旅もここまでか。予定より早くなってしまったが、このクソッタレな世界での俺の役目は終わりってことだな。
ハルト、これからおまえに俺の全てを預ける。
俺の全スキルと師匠から弟子へと代々受け継がれてきた数多のユニークスキルとExスキルをお前に譲渡するとっておきの術式だ。おまえの能力は格段に向上し、今の俺すら軽く超える力を得るだろう。その力で、やつをぶちのめせ!」
師匠は僕の頭に手を乗せ数度撫でる。
「さあ受け継げハルト! これが俺から弟子への最後の餞別だ。
スキル
光が僕と師匠を包み込む。
自分の中に師匠と弟子の想いが、絆が、力が流れ込んでくる。
すごく暖かい……。涙が溢れてくる……。
「まだまだ教えてやりたいこともあったが、おまえの成長を見守る日々は最高に楽しかったよ。ここで旅が終わってしまうのは少し名残惜しい気もするが、まあ、あのムカつく薄ら笑いを浮かべる魔人の顔面を俺の分を上乗せしてぶん殴ってくれれば、それでスッキリするさ。さよならだ、ハルト。俺の自慢の弟子……」
再び僕の頭を数度なで優しい笑顔でそう言うと強烈な光が放たれる。
眩しさで目を閉じる。僕の頭から師匠の優しい手の感覚が、消えた――。
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