第六話 幼馴染との再会
二年生が始まって二回目の週の始まり。
今日から授業が行われ、同時に放課後の校内清掃も始まる。
各教室六つの掃除場所が任さられて、それぞれ6人ずつの生徒が担任から任された掃除場所を清掃する。
俺の掃除班は舞と立花含めた六人の班で教室を担当することとなった。
「じゃあさっさとやるか、掃除」
「はい」
「うちの家、掃除はお母さんとル○バだから勇人頑張ってね」
真面目な立花はやる気満々な様子だが舞は心底、気が顔に入っていなかった。
「文明の利器と母親と俺に頼るな。取り敢えずみんなで机を運ぶか」
まだ衣替えの季節ではないので来ている長袖ブレザーの袖をまくって俺は机を後ろへと運んでいく。
俺に続いて、各々のペースで机を運び各自、掃除用具のロッカーからモップやほうきやぞうきんを取り出していく。
「私と麗奈ちゃんはほうきね。はい麗奈ちゃん」
「あっありがとうございます!」
舞は俺たちの意見を無視して、素早く自分と立花の分の放棄を確保して、
俺のほうを気にする立花の背中を押して、掃除を始めてしまった。
(あいつ、一番楽なの選びやがったな…)
そんな自分勝手な舞と立花と俺は去年も同じクラスであったため、二人は俺を経由でとかなり仲がいい。
二人きりではないが、女子のグループ5,6人で何回か遊びに行ったこともあるみたいだ。
まだ俺は立花と遊びに行ったことないのに…っとちょっとだけ妬んでしまったのは内緒だ。
「おい。どうしたんだ?」
「いや別に何でもない。無視してくれ」
「何陽キャにうろたえてんだ!女子に負けても陽キャ男子には勝ってせめて雑巾だけは回避しないと!」
すると横から同じ掃除グループの三人組の男子のこっちに背中を向けているが話し声が聞こえてきた。
「もうモップははっ…あいつにあげて、俺達は陰キャらしく寂しく雑巾やろうぜ」
「陽キャに屈服するのか!?それでもお前は…」
「なあ君たち」
「「「!?」」」
何やらこそこそと喋っていた三人組に声を掛けると三人とも肩をビクッとさせてから完全に固まってしまい、誰も目を合わせてくれない。
「なっ何…かな?」
「いや、三人は掃除何やりたいのかなって思って」
「私達はえとー…一応…何というか…モップがやりたいなと…思っておりまして…」
「そうなんだ。でもホップ係は二人だけどどうするの?」
「あっえとー」
一向にこっちを向く気配がなく、完全に内輪だけで話してしまっているこの三人組は
見るからに社交的ではなさそうだ。
俺もあんまり喋るタイプではないがここまで内向的な態度取られてしまうと打ち解けることはかなり難しそうな雰囲気。
この一年、掃除は同じメンバーなのにこれは困ったな…
っと等々三人組が丸くなり、円になってじゃんけんをし始めた時に俺は三人のうちの一人にものすごい見覚えがあった。
(あれ?あいつってもしかして…)
「「おっしゃー!」」
「マジ…か…」
っと見覚えのあるその男子をまじまじと見ているといつの間にかじゃんけんの決着がついたらしい。
どうやら俺が見覚えのある男子生徒が負けて他の二人が勝ったみたいだ。
「えとーじゃあ我々はモップをやらせていただきます!!」
「お手数かけて大変申し訳ございません!!では」
「おっおう」
同級生なのに何故か敬礼をして、妙に言葉遣いだけは丁寧なんだよなこいつら。すごいぎこちないけど。
「じゃあ俺達は雑巾だな」
「あっはい。そうですね」
先ほどまでと変わらず絶対にこっちに目線を向けずに彼は逃げるように教室を出て、雑巾を持ち、水道へと向かって行ってしまったので俺は慌てて追いかける。
「ねえ君」
先に水道に着いて雑巾を洗おうとする彼に俺は話しかけると彼は肩をビクッとさせてより顔を沈めて、俺に隠した。
「…はい。何でしょうか…」
「君さ、中村健(なかむらたける)だよな?」
「!?…はい」
「やっぱり健じゃん」
俺の見覚えに狂いはなく、やはりこいつは小学校の六年間同じ習字教室に通っていた
友達の中村健だった。
「お前、同じ高校だったんだな」
「まあ、一応」
「もしかしてお前は俺のこと気づいてた?」
「…入学式の時から既に」
「最初も最初じゃん」
言い訳にはなるけど、小学校の時は眼鏡かけていなかったから眼鏡姿のこいつに全く気がつかなかった。
「なんで話しかけてこなかったんだ?」
「久しぶりに会った友に気楽に話せるコミュ力あったら陰キャしてない」
「そっそうか」
自分で怒気が混ざったような声音で陰キャと言っているが昔は習字教室ではよく騒いでムードメーカー的な存在だったのにたった中学三年間と少しでこんなにも変わるものなんだな。
「もういいか?さっさと掃除なんて終わらせて家に帰りたいんだ」
「おっおう。そうか、ごめん」
嫌そうにこっちを一瞥して、話す気のない言葉に俺は少し寂しく感じた。
だけど、本人が嫌がっているのだから無理に止めるのは忍びない。
あいつの変わりようから、俺が知っているあいつはもういないと知って、
今のあいつには俺が介在しないことを思い知った。
心に寂寥を感じながらも俺は教室へと歩き出す足を止めることが出来なかった。
だが、俺が止めることができなかった足は何故か健自身が止めて、こちらに振り替える。
「…ごめん。もう昔の俺じゃないんだ」
寂しそうな声音で謝罪した健の言葉は色んな感情が含まれているような気がした。
「健」
その声音を聴いて、俺は自分の意思が一瞬でひっくり返った。
「…何?」
「今日の午後の8時過ぎ、駅前のファミレスに来てくれ」
「えっ?なんで?」
「話したいことがある。別に今、返事はいらない。面倒だったら来なくていいから」
簡潔に答えると健は目線は向けないが頷いて、再び教室へと歩き出した。
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