プロローグ2 どうして二人は付き合うことになったのか…
~勇人の中学時代~
「お前らいつも一緒に登校してるんだろ?」
「完全にカップルじゃん」
「ひゅーひゅーお似合いだぜ!」
休み時間、クラスの友達と喋っているといつの間にか俺と舞の話題になり
聞きなれた茶化しの言葉が羅列する。
「うっせ。別にそういう関係じゃねーよ」
いちいちこんなことに角を立てていたらきりがないので俺は手慣れたように
友達をあしらって話題を流した。
でも俺はふと考えた。俺は好きじゃなくてもあいつはどうなんだって。
舞は俺のことをどう思っているんだ?こんだけ長く親しい幼馴染をやっているんだし
もしかしたら俺に好意を抱いている可能性も結構あるんじゃないか?っと。
別にイケメンなわけじゃないし、成績は副教科以外はからっきしで主教科ぼろぼろ。
でも人生においてあいつと関わっていない時間のほうが少ないくらいなんだし、モテなくても俺に好意を向けていてもおかしくないような気がしていた。
そうなると次に出てくる疑問が『もし告白されたら?』という疑問だった。
俺は舞のことが好きではない。でもそれはあくまでも異性として。
幼馴染としてみるなら、ここまで長い付き合いなのでそれなりに情はあるし、あいつが悲しんでいたり、怒っていたり、悩んでいたりしたら解決してあげたいという気持ちは芽生える。
でもそれがイコール恋愛感情かと聞かれると俺は首を傾げる。
だから、もし舞に告白されたら俺は首を横に振るつもりではいる。
だけど、多分できない。
理由はさっきも言った通り、俺は舞に対してそれなりに情を持っている。
俺が断って、あいつが傷ついてしまうのが途轍もなくいやだからだ。
それにその後の関係もきまずい。
断ってしまったらきっといつもみたいに登校は出来ないし、会話だって交わすことは無くなるだろう。
だから断りたくない。かといって自分に噓をついて付き合うのも違う。
あいつとは恋人じゃなくてただの親しい幼馴染で俺はいたい。
…はあー。どうか舞が俺のことを好きじゃありませんように。
だが、俺のそんな願いは叶うことは無かった。
それは高校一年の冬、俺のスマホに一件の通知が入った。
スマホを見て、通知を確認するとクラスの女子からのメッセージだった。
内容は『今日聞いたんだけど舞、勇人君のこと好きなんだって』というメッセージ。
そのメッセージを読んだ瞬間、俺は無意識にため息がこぼれる。
そのため息はこれからの展開が容易に考えられるから出たため息だった。
今、うちの高校では『勇人と舞は両思いで確定!』という訳の分からない共通認識が
確立されており、舞が俺のことを好きなのを自白したのであればあとは俺だけ。
舞が俺のことを好きなら男子である俺が告白をしなければいけないという空気になるのは必至だった。
そして俺が告白してしまったら、俺と舞は付き合うことになってしまう。
でも今、俺にとってそれが一番困る。
何故なら俺は現在進行形で別の人に恋をしているからだ。
それなのになぜ俺は好きでもない人に告白しなければいけないのか?
そんなのあまりにも理不尽すぎる話だ。
しかし、俺は周りの空気に完敗して、一年の最後の登校日であるあの日、舞を校舎裏へと呼び出して、自分の気持ちに噓をついて舞に告白をした。
~同じく、舞の中学時代~
「ねえ、やっぱ舞って勇人君のこと好きなの?」
「えっ?」
「もう付き合ってたりして」
「付き合ってない!付き合ってないよ!」
こんな風な会話を交わしたのは人生で何回目だろうか。
私にとって勇人はただの幼馴染で今もなお、結構仲がいいだけ。
そこに恋愛感情は介在していないし、勇人を好きになったことは無い。
だけど皆にとってみれば『ただの幼馴染』では済まないのだろう。
けど気持ちは分かる。だってはたから見たら10年前からの仲が良い幼馴染だなんて滅茶苦茶ロマンチックな話だと思う。
勝手に恋へと繋がってしまうのも仕方のない話だと思うし、ごく普通なこと。
でも私は勇人のことは好きじゃない。別に噓はついていない。100%本気の話だ。
そりゃあほぼ毎日一緒に登校して、かなり親しい関係だから情はある。
だけど、それは恋情ではなくて愛情と友情を足して二で割った位の感情。
平穏にこのままの関係が一番いい。私は勇人のことが好きじゃない。
でも私は勇人の感情はよく知らないし、私のことをどう思っているのかも分からない。
もしかしたら私のことが好きかもしれない。
…分からないけど可能性はゼロじゃない。
だって自分でもいうのもなんだが私は結構顔がいい。
運動はからっきしだけど勉強はかなりできるそれなりの優良物件。
そんな私と10年以上も一緒にいるのだから好きな可能性は低くない気がする。
じゃあもし、勇人が私のことが好きなら?きっといつか告白してくるだろう。
そうなれば私はどうしたらいいのだろうか。断るべきだろうか?
…でも断ったらきっと勇人は傷付く。幼馴染を傷つけるようなまねはしたくない。
それに断ったら今までの関係が全て壊れてしまう。
それは出来ることなら避けて通りたい。勇人とは親しい幼馴染のままでいたい。
…はあー神様お願いします!勇人が私のことを好きじゃありませんように!
しかし現実は非情だった。
高校一年の冬に私がとある女友達に『好きな人はいるけど…』と言ってから校内の様子がおかしい。
しばらくを様子を伺うとどうやら私が『勇人のことが好き!』とついに自白したという私の発言が改悪された噓の情報が校内に出回っているらしい。
私は好きな人がいるといっただけなのにどうやらその好きな人が勇人であると決めつけられてしまったみたいだった。
いやまあ確かに私も悪かった。あんな言い方したらそりゃあ勇人のことだと思うよね。
でも違う。私の言った好きな人は全く別の人のことで勇人のことじゃない。
しかし、一度回った情報を私一人で止められるわけもなく、いつしか学年のほぼ全員の耳へとその情報が届いていた。
ここまで情報が回っていると流石に勇人の耳まで届いちゃってるよね…
非情な現実に私は思わずため息をついて、できるだけの覚悟を決めた。
そして三月の一年生の登校最終日。決めていた覚悟通り、私は勇人に呼び出された。
案の定告白をされた。やはり勇人は私のことが好きだったみたい。
ある程度予測していて、それなりに覚悟を決めていたのに私は心の中で強く落胆してしまう。
好きでもない相手からの告白。当然断るに決まっている。
だけど、皆が今日まで作った雰囲気と多くのギャラリーが見守るこの状態で断るわけにもいかず、私は周りの空気に完敗して勇人の告白を受けてしまった。
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