第7話 大賢者、ご両親と相談する
「そうですか……メリスにそんな才能があったとは……」
「メリスは大丈夫なんですか? どうしたらいいんでしょう……」
うーん、それを相談したくてぶっちゃけたんだけどなあ。
しかし、俺は人と話しているうちに考えがまとまっていくタイプの大賢者だ。
とりあえず思いつくことをべらべらしゃべってみよう。
「今日明日で問題になるわけではないですが、メリスさんが成長するほどに生成される魔力量は増えていきます。なので、なるべく早いうちに魔力の上手な吐き出し方を身に着け――つまり、魔法を使えるようになる必要があります」
「大賢者様が教えてくださるのではないのですか?」
「そうしたいのは山々なのですが、私と彼女とでは魔法使いとしてのタイプが異なるというか……私の指導できちんと魔法が使えるようにできるのか自信がありません」
「そんな……」
おじさんとおばさんが絶望的な表情になりかけたので、俺は慌てて言葉を紡いだ。
「しかし、彼女に適した師も必ずどこかにいるでしょう。百年前のことですが、私も『
「インナーサークル? そういえば、王都の大学院が昔そんな呼び名だったとか……」
んん? なんだ? 名前が変わったのか?
「ええ、たしか十年ほど前に、貴族学校や神学校、冒険者学校と統合して『王立大学院』という名に変わったそうです」
冒険者学校? なんだそりゃ? まあ、当面は関係なさそうだし一旦スルーしよう。
「なるほど、ならばひとまずそこを訪ねてみるのがよさそうですね。メリスさんも同じく魔法を究めようという仲間ができれば研鑽もしやすいでしょうし」
「はい……いや、しかし……」
「何か問題でも? 不安があるかもしれませんが、教師ならば私が見極めますので心配ありませんよ」
「いえ、恥ずかしながら、学費の工面がとても……」
「えっ、金取んの!?」
「は?」
あ、やばいやばい、びっくりして思わず素が出てしまった。
俺はこほんと咳払いをして何事もなかったかのように続ける。
「失礼。私のころは才能のあるもの、意欲のあるものが手弁当で集まるところでしたから。それで、具体的に学費とはどれくらいかかるものなのでしょうか?」
「はあ、私も正確には知らないのですが……」
おじさんが言った額は、メリス一家が数年がかりでやっと稼げるかどうかという大金だった。
うわあ、高っけえ。魔法使いが集まって好き勝手ダベってるだけの場所でどうしてそんなに金がかかるんだ?
先日退治したワイバーンの肉やら皮やらを売った金で、おじさん一家には多少の蓄えができている。
しかし、その程度ではとても足りない。
あるいは俺が魔物を狩りまくって金を稼ぐか……頭の中で算盤を弾く。
うーん、ちょっとキツイな。間に合わないかもしれない。
こうなったらアレだな、最終手段だ。
「考えているだけでは埒が明きません。まずは王都に行ってみましょう。もしかしたら、私のツテが残っているかもしれませんし」
当たって砕けろ、というやつである。
王都までは歩いて5日ほどの距離がある。メリスの足に合わせると1週間くらいは見ておいた方がいいかな?
道中でも魔法の指導は続けられるし、王立大学院とやらが空振りに終わっても損をするわけではない。
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