第6話 大賢者、使命に目覚める
これまででわかったことがある。
メリスの年齢は10歳。
貴族であれば、王都の学校に入っていてもおかしくない年齢だ。
そして、これぐらいの年頃の女の子を、幼女と分類すべきなのか少女と定義するべきなのか、俺はそんな物差しを持っていない……。
って、そういう話じゃないんんだよ。
メリスちゃん、とんでもなく魔法の才能があるっぽいんだけど?
回復してきたからわかったが、この子は魂の器がとにかくデカい。
出力される魔力の量が桁違いだ。
それが未発達の細い経絡を巡っていたせいで概念上の魔石を作って流れを阻害してしまっていたらしい。メリスが死にかけた病気の原因だ。
魔力をドバーっと流してその魔石が流れたおかげで、魂の輪郭がはっきり見えてきた。
魔力は血肉から生み出され、経絡をめぐり、魂に貯められる。
幼い身体では魔力の生成量がわずかであるから、経絡は発達しない。
そのせいで、魂の器に大量の魔力が溜まってしまうと吐き出す量が足りなくなるのだ。
魔力が逆流したりなんだりかんだりして、さまざまな不調を引き起こす。
代謝できない魔力は意識して体外に出さなければならないのだが、それができないまま溜め込んでしまっていたというわけだ。
うむう、メリスちゃんに魔法を教えるの、もはやマストじゃん、これ。
最初は「魔法使いに憧れちゃったか、かわいいなあ。うふふ、初歩的な魔法くらいは教えてあげようかな。がんばれば誰でもおぼえられるし」くらいの気持ちだったが、そういう問題ではなくなっている。自分の意志で適切に体外へ魔力を吐き出せるようにならないと、破裂して死んでしまうのが明白なのだ。
ああー……ここまで考えて、あの神様ボイスが俺の魂をメリスちゃんの身体に移植した理由が理解できた気がした。
放っておいたら破裂する魂の器の出力弁として、俺を利用しようってわけか。
この推測が正しいかどうかは知らない。
利用されているかどうかもわからない。
ま、でもさ。
目の前で美少女が死の運命を辿ろうってのを無視はできねえよ。
美幼女かもしんないけど。
まあその話は一旦置いておくとして。
それにしても神様ってのはつまんねえことをしやがる。
俺を生き返す力があるんなら、回りくどい真似はやめて最初っからメリスを助けてやればいいじゃねえか。
俺は神々への復讐を誓い、どんぐりで出来た蹄を天に突き上げた。
俺たちの戦いはこれからだ!!
* * *
なんて、現実逃避をしている場合じゃない。
そこまで差し迫った問題ではないが、一旦魔力を解き放つと全身金色になってしゅおんしゅおんする幼女というのは非常に危うい存在だ。なにしろ、しゅおんしゅおんするか、魔力を貯め込んだ上で自壊するという二択なのである。
歴史を紐解くと、魔力の暴走によって大きな破壊をもたらした悲劇のヒロインなんてのは掃いて捨てるほど存在する。
魔力の扱いをおぼえないと、いつかメリスにとって不幸な事態を招くことになるだろう。
とりあえずアレだ……俺ひとりで考えててもアレだし、おじさんとおばさんに相談してアレしよう……。
俺は魔法に関しては一家言あるが、世俗の問題についてはアレなのだ……アレだから野郎ばっかりのパーティで暑苦しい前世を過ごしたアレなのだ……おじさんもおばさんもなんか世慣れた感じだし、少なくとも結婚できているし子どももいるという点で俺よりも遥かにアレなので俺にわからないアレはなんとかアレしてもらおう。
俺は知能指数を極限まで下げて、おじさんとおばさんにメリスの体質について正直に打ち明けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます