第7話 3-2.高石さんの最期
高石さんは毎年夏になると食欲がなくなりほとんど全く食べなくなり瘦せ細ってくるが、秋になると盛り返して嘘のように食べることを繰り返していたが、その年は秋になっても食欲が戻らず、介助しようとして、今までだと怒って払いのける元気があったが、それもなく、やがて起きて来なくなり、点滴が始まり、やがて、ある朝、目覚めを確認しようと声掛けをしても反応がなくなった。
そのまま無反応寝たきりの状態となり、数日後、息を引き取った。
亡くなった後、家族から、僕に対して名指しでお礼を言われ、お金を渡そうとされたので、さすがに固辞した。
あの方は他の人と違って喋り方がゆっくりとしていて安心できる、話をよく聴いてくれた、昭南島のことも分かってくれた、と喜んでいました、と家族からお礼を言われ、今までの人生ではペースの早い世の中で喋り方がゆっくりしていることに対してはイライラされたり批判されたり非難されたりということばかりだったが初めてそんなことを言われ、嫌で仕方のなかった自分の話し方の特徴や相手の話を聴くことに価値のようなものを感じた。
大山さんも家族からお礼を渡そうとされたことがあり、それを他の職員から妬まれていたので、そのことで皆に嫌な思いを抱かせないか、と黙っていることにしたが、一部から全員に伝わってしまったようだった。
しかしその後皆から悪感情を持たれるようなことはなく、逆に一目置かれるようになり、毎日の仕事はますますやりやすくなり、意見も通るようになってきた。入職当時は嫌で不安しかなかった仕事が随分と楽しくなってきたが、給料は上がらなかった。
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