第8話 〈ナルゴ〉視点(人骨の人)
浅い穴に人骨を埋葬して、二人で手を合わせた。
手で触るのが嫌だったので、人骨はスコップで移動した。
しっかりとは埋められなかったが、許してもうらおう。
この人骨の人が着ていた服とかを、俺達は貰うことにした。
「〈アワ〉、服とかはぎ取っても良いのかな」
「はぎ取ってはいません。有効に使わさせて頂いているのです。全然違います」
「たたられたりしない」
「しません。私達、ちゃんと埋葬してあげました。感謝されているはずです」
〈アワ〉は、どうしても服が欲しいんだな。
今着ているのは雑巾だもの。
この人骨が着ていた、上着とズボンを頂いた。
シャツとパンツは、ボロボロで形がもう無かった。
窪みを良く見ると、この人骨の人の持ち物があった。
錆びた剣、錆びた針、錆びたコップがあった。
全部錆びているけど、今の俺たちには全て必要な物だ。
正直ありがたい。
辺りを探していた〈アワ〉が、「火打石がありました」と言っていた。
ライターもマッチも、無い世界なんだな。
もう一度、丁寧に埋葬場所に手を合わせておいた。
感謝だ。
俺は、これらを部屋に運び込んだ。
コケもスコップで採集した。
〈アワ〉は人骨の人の上着を着ているが、すごくブカブカだ。
大人の服を着た幼い子供のようだ。
でも、足も膝まで隠れていて安心だ。
ひどい状態の肌を見なくて済む。
帰りも、〈アワ〉を背負って帰った。
ゴツゴツした、丈夫な上着の感触しかしなかった。
枯れ木の、感触じゃなくて良かった。
疲れた。
〈アワ〉に酸っぱいパンを一切れと、臭い肉を千切って渡した。
俺も千切ったのを口にほうり込んだ。
〈アワ〉は「ごちそうさま」と礼を言った。
礼儀はちゃんとしている。
「どういたしまして。疲れたから、俺はもう寝るよ」
俺は寝転がった。
固い床だけど、好きな時に寝ることが出来る。
自由は良い。
〈アワ〉は、物乞いの時と今では、どちらが幸せなのかと、考えているうちに、俺は眠ったようだ。
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