第2話 列車食堂顔負けの華やかさを添える女子大生
急募 ウエイトレス 時給***円~ 賄い付・住込み応相談 年齢23歳まで
容姿端麗より、気立ての良さを望む。勤務時間等、詳細は店長まで
広告を見る老紳士と大学生の前に、若い女性が現れた。
「森川先生と大宮哲郎君ですね」
店のドアを開けて、ウエイトレス姿の女性が声をかけてきた。
彼女の服は、当時の列車食堂の女子従業員を意識したもの。
岡山の街の飲食店の中でも、その姿は見事にあか抜けている。
そんな彼女のいるこの店、街中からは幾分離れてはいるものの、O大学関係者を中心に、多くの客でにぎわっている。これで、繁盛しないはずがない。
「本田さん、こんにちは。実は、森川先生に用があると言われて呼び出されたのよ」
「まさか、大宮君、ウエイトレスに応募するとか、まさか・・・」
「誰がするかよ。そんな気持ち悪い「まさか」は、ありえ、ない(爆笑)!」
「ああ、すまんな、陽子さん、哲郎君に相談したことがあって、そのなんじゃ、ここで一つお話しておきたい事案が発生しましてな。まあでもまずは、飯でも食おうと、そういうことで伺ったのよ。別に、営業妨害に来たわけじゃ、ねえからな」
「それはもちろん、承知しております。ではお二人とも、御席に、どうぞ」
この店で接客しているのは、本田陽子というO大学教育学部に通う女子大生で、大宮哲郎青年の中学・高校の同級生でもある。彼女はこの窓ガラスという喫茶店の経営者の娘であり、日曜などの開いているときはこうして「実家の手伝い」をしている。
また彼女は、よつ葉園にボランティア活動で来たこともあれば、中学時代には同級生でよつ葉園の友人がいたため、遊びに来たことも幾度かあるので、森川園長もよく知っていた。
「お客様2名、オーダー待ちです!」
甲高い声が、厨房に響く。その声の主のところに、マスターがやってきた。
「まずは、珈琲をお出ししよう。それから、陽子も、先生方の話に加わってもらいたい」
「マスター、かしこまりました」
父親であっても、ここは職場である。
彼女はあまりにもよく、それを心得ている。
「森川園長先生、お話は伺っております。大宮君に加えて、うちの陽子も話に加えさせますので、よろしくお願いします。まずは、珈琲を陽子に持たせます。お代は結構ですので」
「本田さん、ありがとう、申し訳ありませんな、うちの卒園生のために・・・」
「いえいえ、いいってことです。まずは、陽子の話を聞いてやってください。それでおおむね、事情はご理解いただけると思いますので。あ、それから大宮君も、この状況を何卒把握しておいて。君が説得したほうがよさそうな案件だからな」
「はい。わかりました」
人気ウエイトレスの同級生の男子大学生は、同級生の父親の依頼に快く応じた。
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