閑話 夕暮れ極秘ファイル④

(三人称視点)


 ハンマブルクの盗賊ギルドに所属する工作員ナイト・ストーカーであるシルヴィオ・ジュラメントことアーベント夕暮れ

 彼が青い鳥作戦オペラツィオーン・ブラウアーフォーゲルにあたって、本国に送った調査報告書から、気になる項目を再び、抜粋しよう。




東西首脳会議

和平協定交渉に向けて


 今回、開催された東西首脳会議の議題は恒久的な和平協定の締結だった。


 キーマンは二人。

 自由都市同盟ハンマブルクの外務卿オスカー・キッシンガー。

 自由共和国議員コンスタンチン・モロゾフ。

 両人の動き次第で和平協定の締結が現実的な物になると思われる。


 これは車輪の両輪のようなものであり、どちらかが欠けても円滑に事が進まない。

 当然のように予想されたことだが、両人の命を狙った暗殺計画を事前に察知した。


 モロゾフ議員の命を狙った暗殺事件は未遂に終わる。

 件の『黎明の聖女』によって、暗殺者が退けられたと判断せざるを得ない。

 暗殺者を放ったのはカーズニ処刑であるとみて、間違いない。


 現場に残された遺留品の痕跡から、東特有の物が散見された。

 しかし、ここで判断に苦しむ不可解な点が見受けられる。


 『黎明の聖女』と『薔薇姫』が同一の存在であると仮定した場合、『薔薇姫』がカーズニに所属していることで矛盾が生じる。

 この不可解な点は下記のキッシンガー卿暗殺未遂事件においても同様のことが起きている。


 会議開催中に発生したキッシンガー卿の暗殺事件では東側からの協力が打診されるという異例の事態も発生している。


 現場にて同東側工作員と合流。

 協力者が『薔薇姫』だったことから、カーズニの意図が全く、読めない。

 キッシンガー卿の暗殺を謀る黒幕が、カーズニであることは明白である。

 暗殺者を差し向けながら、暗殺者で守ろうとする行動に何らかの意味が隠されているのだろうか?


 それとなく『薔薇姫』を牽制し、情報を聞き出そうとするも失敗。

 しかし、感触としては悪くない。

 『薔薇姫』が『公女』である確率は高いと思われるが、説得には並々ならぬ努力と困難が待ち受けていることは確実である。


 また、『薔薇姫』を始めとした七悪セブンヴァイスは足並みが揃っていないことも判明。

 組織的に動いているのではなく、単独行動をとっているの可能性が高い。


 キッシンガー卿の暗殺を謀った暗殺者は集団で動いていた。

 こちらは組織的な動きであるとみて、間違いない。

 カーズニという組織が奇妙なヒエラルキー構造を取っている可能性あり。


 カーズニが活発な動きを見せているので注意されたし。

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