閑話 夕暮れ極秘ファイル③

(三人称視点)


 アーベントは以下の報告書を上層部に上げることなく、廃棄している。




パラケ・ルッスースの人造人間ホムンクルス


 青い鳥作戦オペラツィオーン・ブラウアーフォーゲルの遂行にあたり、作戦を円滑に進めるべく、パラティーノ郊外の家屋を購入。

 同邸宅は錬金術師パラケ・ルッスースの別荘だったことが判明。


 邸宅内にて、パラケ・ルッスースの遺産たる人造人間ホムンクルスを発見。

 幼児よりも大きいが少女というには小さいが、この大きさはこれまでに確認されたホムンクルスがガラス瓶に収まるサイズだったことを考えると規格外と言える。


 ガラス瓶の中でしか、活動・生存が出来ないとされているホムンクルスとは異なり、自由に動き回ることが可能である。

 ミルキーブロンドの髪と青味がかった灰色アッシュブルーの瞳を持ち、感情を持っている。

 不思議なのはこのホムンクルスの容貌にどこか、既視感があることだろう。

 この謎についての詳細は後述の日記に示唆されていた。




 同ホムンクルスを発見した地下室にて、パラケ・ルッスースの日記を発見。

 日記はホムンクルスに関する研究メモを兼ねていたと思われる。


 完璧なる人造人間パーフェクト・ホムンクルスと銘打たれたこのホムンクルスはパラケ・ルッスースが所持していたアゾート完全という名の小剣と彼自身の精を核として、製造されている。

 このアゾート完全こそ、錬金術師が完成を目指す夢の物質である『賢者の石』であると想定して間違いないだろう。


 しかし、日記によれば、パラケ・ルッスースの存命中に完璧なる人造人間パーフェクト・ホムンクルスは完成していない。

 核を中心としたまるで人形の素体のような物体を作り上げることに成功したのみだったようである。


 完成には男と女の情報が必要だったようだが、これを入手することがついに出来なかったと記録されている。

 自らの知識と経験を完璧なる人造人間パーフェクト・ホムンクルスに移すことに成功したパラケ・ルッスースは、全てを完璧なる人造人間パーフェクト・ホムンクルスことパルムに託し、永遠の眠りについたようである。


 日記に示唆されていた内容をかんがみて、判明したことがある。

 私、アーベント及び契約妻であるアウローラが偶然、流した血液により、完璧なる人造人間パーフェクト・ホムンクルスが眠りから、覚醒した可能性が高い。


 このホムンクルスについては今後も監視の目が必要だろう。

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