第31話 パミュは二度死ぬ

 シルヴィオは西のエージェント剣聖であるナイト・ストーカー。

 アウローラは東のエージェント暗殺者であるカーズニ処刑

 少女パルムは不可思議な力を持つ人造人間ホムンクルス

 これまで交わることなく、バラバラの生き方をしてきた三人が家族であろうと選んだ百貨店で待ち受けるものとは……。




(パミュ視点)


 パパシルヴィオが服を選び、ママアウローラの顔が赤くなったり、青くなったりしてる。

 とても微笑ましい二人。

 ママの顔は百面相みたいで面白い。


 パパは葡萄酒のような色をしたワンピースを手にしてる。

 スカートのところが短くて、肩や胸がバーンのだ。

 背中もドーンなのだ。


 パミュ、知ってる。

 お遊戯で着るドレスだベロアキャミソールワンピース

 パパ、本気か!?


「アリーさんにはこういうのも似合っていると思いますよ」

(アリーさんはスタイルがいい。これを着たら、似合うだろうな。少々、刺激の強すぎる大胆なデザインだが……。見たい。いや、違う。俺は見たいのではない。そうだ。これはエージェントしての見聞を広める為に必要なことなのだ)

「少し、大胆なデザインなんですね。私には似合わないのではないでしょうか?」

(こんなに短い裾のワンピースなんて、着たことありません。体のラインがもろに出ちゃうじゃないですか。これが似合うなんて……シルさんは本気でそう言ってくれてるのかしら? やだぁ、きゃあっ)

「色々な服を着るのも経験ですし、このようなやり取りを外で見せることで偽装結婚であることを周囲からのカモフラージュになるのですよ」

(そう。全ては任務遂行の為だ。止むを得ず、この服を着てもらおうとしているだけに過ぎない。断じて、見たい訳ではないのだ。少しくらいは……いや、違うぞ。断じて、違う)

「そうだったんですね。さすが、シルさんです」

(私ったら、また勘違いしていたんでしょうか? そうですよね。私とシルさんの関係は偽りに過ぎませんもの。ダメよ、ダメ。もっと自分を保たないと!)


 聞こえてくる内なる声で食あたりを起こしそう!

 二人とも真面目な顔で喋ってるのに大人って怖い……。

 げぷぅ。




 まずい。

 今、パミュは最大のピンチを迎えてる!


 ていぼーがけっかいでボカーンになりそう。

 お買い物の前にお昼を食べた時、果実ジュースがあまりにも美味しくて、飲みすぎたせいだ。

 このままではおもらしでしょーらいがゆーぼーなパミュの未来がまっくらになっちゃう。


 パパとママは周りの視線も気にしないでまだ、服選びにむちゅーだ。

 パミュのピンチには気付いてくれそうもない。


「パミュ、行くます!」


 早く、トイレを見つけないとパミュ終わる。

 漏らす! ダメ! 絶対!

 でも、急ぐとそれはそれでピンチ。

 刺激もダメ! 絶対!


 よかった。

 トイレ近くにあった!

 パミュ助かる!!




「たすかるます。あるがとござます!」


 親切なおばちゃんに手を洗うのを手伝ってもらった。

 ていぼーはけっかい寸前だったから、少しでも遅れていたら、だーさんじだ。

 危うく、パミュのホムンクルス生が終わるとこだった。

 ジュース飲みすぎもダメ! 絶対!


 パミュ、お礼も言えた。

 あとはパパとママのところに戻るだけ。

 それくらい簡単。

 パミュは賢い!


「ふっふぅ~ん♪」


 簡単なメロディを口ずさんでスキップしようとしたら、急に右手をつかまれた。

 べっちょりという言葉がぴったり。

 汗まみれのおててだ。

 気持ち悪い。


 まるで獣みたいに荒い呼吸がさらに気持ち悪い。

 恐る恐る振り返ったパミュの目の前にパパとはまるで違う男の人が立っていた。

 太い。

 丸い。

 とにかく、まーはんたいだ。


「ちみ、可愛いでござるな。それがしの嫁にするでござるよ。はあはあ」


 ぎにゃあああああ。

 心の中ではこれ以上ない大声が出ているのに声も出ないし、足も震えて動かない。

 助けて、誰か。

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