第27話 薔薇姫の目にも泪
重いです。
体が重い。
こんなにも瞼が重いことが今までにあったかしら?
「う゛、う゛ぅ~」
声もおかしいです。
掠れていて、まともに出ません。
体もだるくて、仕方ありません。
まるで何日も動かしていなかったような……。
「ママ。おくたか?」
パミュさんに見つめられています。
私を心配してくれているのでしょうか?
彼女の瞳が、不安定な揺らぎを見せているように感じました。
それなのになぜでしょう。
心の内を見透かされているような不思議な感覚。
不思議な感覚と言えば、今、寝ているこの部屋にも違和感を感じます。
ここはどこなのかしら?
私の部屋でないのは確か、みたいだけど……。
「ここ、パパのへや。パパ、よんでくる」
パタパタと走っていくパミュさんを呼び止めようにも声は出ないし、身体も動かせません。
待ってください!
今、どういう状況なの?
えっと、ここはシルさんの部屋で……!?
えぇ?
着ていません……。
ど、ど、ど、ど、どういうことでしょう?
応急処置を施して、どうにか家に帰ってこれたのは覚えているのにそこから、何があったのかを思い出せません。
体力的にも限界を迎えていて、倒れ込んだところが温かくて、気持ち良かったので意識を手放してしまった。
覚えているのはそこまでです。
ここはシルさんの部屋で私が寝ているのは彼のベッド。
そして、何も着ていない……。
文字通り、生まれたままの姿で寝ていて、身体はなぜか、汗ばんでいます。
この拭えない不快感は何でしょうか?
もしかして、もしかしてなのでしょうか?
はぁ。
頭が熱っぽくて、クラクラしてきて、天井がグルグルしてきました。
もう嫌……。
導き出せる答えを想像してしまった私は意識を再び、手放しました。
全てが夢であって欲しいと願いながら……。
体の自由が戻って、どうにか起き上がれるようになった私。
今、キッチンダイニングのテーブルに突っ伏しています。
ええ、自己嫌悪に陥ってます……。
少しでもシルさんを疑ったという自分が許せません。
全部、勘違い。
あんなことやこんなことなんて、なかったんです。
私は高熱で三日間意識が無かっただけ。
シルさんとパミュさんは私を心配して、看病していただけ。
「ママ。おつこむな。だれにでもミスはある」
「そ、そうだね。アリーさん、パミュの言うことには一理ありますよ。大したことありませんから、気にしないでください」
「でも……本当にごめんなさい」
意識と体の自由を取り戻した私が真っ先にしたこと。
それは取り返しのつかない
様子を見に来てくれたシルさんにパンチしちゃったのです……。
それも顔です。
シルさんの右目の周りは青くなって、腫れています。
どうしましょう。
「ママ。かいふく
「ええ?」
全てを悟ったようなパミュさんの目。
まるで何かを訴えかけているみたい。
回復? 机?
あぁ!? そうでした。
私、癒しの魔法を使えるじゃないですか……。
涙ぐみながら、シルさんに
何で、こうも駄目なのでしょう。
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