第19話 この女、暗殺者につき
私ったら、シルさんのことを疑ったりして、いけませんね……。
誠実で私とも真摯に付き合ってくれる人です。
そんな人に隠し子がいるなどと考えること自体、失礼なことです。
何と愚かなんでしょう……。
「夕食は僕に任せてください。すぐに用意しますので……」
「パミュ、わかった!」
「は、はい。でも、私も何か、したいです」
戸籍で夫婦になっただけ。
形だけの妻。
彼は双方に利がある偽装結婚だと言ってましたが、私にはそうは思えません。
これでは私がされるばかりです。
私にだけ、利があるみたいじゃないですか?
何も出来ない自分が何だか、許せません……。
シルさんの邪魔になる人を消せば、喜んでくれるでしょうか?
いえ、いけませんよね。
私情で力を振るうなんて、許されないことですし。
「そうですね。では食器を用意してくれませんか? 今、僕も手が離せないのでお願いします」
慣れた手つきで料理をしているシルさんを見ると手伝いなんて、本当はいらないのでしょう。
それなのに結局、気を遣ってもらっただけ。
こんなことではいけない気がします。
でも、今は何も出来ない……。
既にテーブルについて、私とシルさんの顔を見比べては青い顔をしているパミュさんの方が私よりもしっかりしているのでは?
まだ、幼いのに……さすが、シルさんの娘!
うんうんとお皿を出しながら、一人頷いているとパミュさんの顔色がさらに悪くなった気がする。
どうしたのかしら?
しかし、いざ夕食が始まるとパミュさんは元気を取り戻していました。
シルさんの料理のお陰かもしれません。
まるでお店で食べていると錯覚を起こしそうなくらいに美味しいんです。
白身魚のソテーも野菜と鶏肉を煮込んだシチューもひと手間加わった味わい深いもの。
下手に料理店に行く必要がないくらいに完璧でした。
食事は体を動かす為の手段としか、捉えていなかった私です。
食に対する拘りなんて、ありません。
ティナにもっと栄養を考えて食べるようにと言われるまで、全く無頓着に生きてきたんです。
そんな私にも分かります。
食べているだけで心が温まるような……。
でも、この後、お仕事があるから、身体が冷えそうですね。
今日の罪深き人は何と鳴くのでしょう?
ワクワクしてきました♪
あら? パミュさんはどうして、私を見たまま、固まっているのでしょう?
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