第63話 激突

 敵陣へ突っ込む中央軍は、チョカイさん、左翼はリョウメイさん、そして右翼はシジセイさんです。

 オウブさんは本陣にてお留守番、総大将です。

 魔将軍三人もお留守番、本陣の守備です。


 敵総大将は、コウケン魔将軍です。

 驚くことにコウケンさんの強さは、こっちの三人の魔将軍を合わせたより強いとのことです。

 もし、一騎打ちが出来る様なら、手合わせしてみたいです。


 アスラ魔王軍の重装歩兵達は、アスラ様のエリクサーを飲んで少し付与がついています。

 これは、人数が少ない分の補正と考えて、許可しました。


 敵は、我軍に雨のように矢を降らせ続けます。


「いけーー、いけえーーーー!!」


 チョカイさんの声が聞こえてきます。

 張り切っているようです。

 前戦で戦う兵士には五個のエリクサーを持たせ、怪我をしたら速やかに回復するように命じています。

 このエリクサーには、体力と魔力の回復、治癒、素早さの付与まで付いている万能エリクサーです。

 自力でエリクサーを飲めない者の保護のみ、シャドウとスザクの参加を認めました。


 今回の戦いで魔王アスラ様からの命令は二つ。

 一つは、「アスラ無き後の戦いを想定せよ」と。

 もう一つは、「戦死者を一人も出すな」です。

 全く無茶で、相反する命令です。


 混戦は続いていますが、時間が立つごとに我軍が優勢になっています。


「チョカイ隊、三百歩さがれーーー!!」

「リョウメイ隊、我らもさがれーーー!!」

「シジショウ隊、俺たちもさがるぞーー!!」


 前戦の部隊が少しだけ下がりました。

 下がった後には敵兵だけが倒れています。


「負傷兵は邪魔だー、攻撃をいったん停止するー。後ろにさげろーーー!!」


 チョカイさんが、敵兵に叫びます。

 敵兵が、負傷兵を助け出すのを眺めながら、我軍はこそこそエリクサーを補充しています。

 敵兵の被害は1万を超えていそうです。


 もう一度ぶつかれば、我軍が優勢になるでしょう。


「全軍つっこめーーー!!!」


 敵兵が、負傷兵を後方へ下げ終るのを見て、チョカイさんの突撃の声が前戦に響き渡りました。


「うおおおおおおーーーー!!」


 我軍から、喚声が上がります。

 再びぶつかりました。

 前戦では、激しい戦いがおこり、バタバタ兵士が倒れます。

 動けないほどの重傷者は、スッと姿を消し、腕や足が吹き飛んだ程度の兵士は、エリクサーで全開になりゾンビの様に復活して、戦いに戻ります。


 戦場に、倒れて動けない兵士の中に、アスラ魔王軍の兵士はいません。

 あっという間に、形勢逆転しました。


「全軍さがれーーー!!」


 コウケンさんが、兵士を下げました。

 形勢不利とみてすぐに対応するのはさすがです。


「全軍さがれーーー!!!」


 チョカイさんも兵士を下げます。


「我が名は、魔王直属、四大魔将軍筆頭コウケンであーーーる!!」


 両軍の間にぽっかり空いた空間に、身長三メートルはあろうかという大男が現れました。


「反乱軍の中に俺と一騎打ちをする勇気のある奴はいないかーー!!」


 とうとう来ました、一騎打ちです。

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