第62話 決戦
さーーっと爽やかな風が魔王都から吹いてきます。
さえぎるものが無い草原なので、魔王都から二十キロ程離れていますが、魔王城の姿がよく見えます。
巨大で迫力のある建物です。別の言い方をすれば気持ちの悪い暗いお城です。
私は魔王都で生活をしていましたので、あまり感動はありませんでした。
でも、兵士や隣でイライラしているオウブさんは、魔王城が見えた時には「うおおおお、やっと、やっと、ここまで来た」と感動していました。
前方の丘の上に、旧魔王軍の魔将軍筆頭の、コウケンさんが本陣を築いています。
一番本陣にいい場所を取られました。
こちらは木を組み、建物の三階くらいの高さで本陣を築きました。
急ごしらえなので、ガタガタで崩れそうです。
「フォリスさん、こっちの布陣は終った。後は開戦の合図待ちだ」
敵は旧魔王軍六万、対するアスラ魔王軍は四万。
「まずは、降伏勧告です。使者を出して下さい。殺される可能性が高いのでシュドウをつけて、ちゃんと命を助けて下さい」
「わかりました。しかしこの布陣、アスラ様がいなくなった時の為とわかりますが、まさかフォリス様……」
オウブさんが私を見ながら暗い表情になりました。
今回の戦いは、将と配下モンスターを後ろにして、兵士が前面で戦うように布陣しています。
それはアスラ様が、勇者に殺されたときのための戦いを想定している。
でも、オウブさんから見れば、私も規格外の存在です。
この戦い方は私の存在すら、計算に入れていない戦い方ということです。
「当然、アスラ様が死ぬときは、私が盾となり先に死にますよ」
「……」
私の笑顔を見て、オウブさんが無言で眉毛をハの字にして見つめてくる。
きっと、心の中で、私達の盾になるのは、自分が先だと思っている様です。でも、言わないのは、言った瞬間に私が駄目だというのがわかっているからでしょうか。
「うわあああああーーー」
叫びながら、使者になっていた兵士が現れた。
剣で切られそうになっていたのか、避けようとしたままの体勢で、シュドウによって移動されてきた。
「お疲れ様です。怪我はありませんか」
「はぁ、はぁ、だ、大丈夫です」
兵士は、まだ呼吸は乱れていますが無事なようです。
使者を殺すというのは、こちらの降伏勧告を無視すると言うことでしょう。
私は、右手を上に上げます。
金色の魔法陣が、本陣の上に出来上がります。
ドーーン
金色の雷が、天に向ってまるで龍のように、のぼっていきました。
「わあああああああーーー!!」
戦場全体から喚声があがった。
アスラ魔王軍、重装歩兵部隊が敵陣に向って走り出した。
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