第43話 怒り
「では、ここは私とクザンで行きます」
「えっ」
僕が驚いていると
「アスラ様は留守番です」
凄くいい笑顔で言われてしまいました。
きっと何か考えがあるのでしょう。
きっと……。
「クザン、あなたは人間を殺すことに、どんな感情がありますか」
私は、走りながらクザンに質問した。
「われには、なんの感情も無い。われにとっては、アスラ様とフォリス様以外は虫となんら変わらぬ」
「ふふふ、今回はそれが頼もしいです。まずは外の見張りから倒します。彼らはアスラバキでお願いします」
クザンは外の見張りを、口をふさいで声を漏らさないようにして倒した。それを私が即座に魔王の玉座の上に転送した。
外の見張りを倒してから、倉庫の入り口から素早く中に入った。
数人の見張りがいましたが、これもアスラバキで、玉座送りにします。
一階のフロアーには、階段と、倉庫への入り口があります。
私は、倉庫への入口を少しだけ開けて中をのぞいてみました。
広いスペースに、四つの檻と馬車の荷台のような物があり、そこに人が入っているようです。
檻の中にはそれぞれ裸の女性が十人以上います。
逃亡防止の為でしょうか、体に何も付けていません。
一つの檻の中にはおぞましい光景が広がっています。
女の尊厳が失われています。
数人の男達が下卑た笑いを浮かべ女性を辱めている。
檻の外の見張りの男達はそれを見ながら笑っている。
私は怒りを抑えきれないでいた。
恐ろしい顔をしていたに違いない。
横で私の顔をみたクザンが怯えているのですから。
「よかったわ、アスラ様と一緒に来なくて、こんな顔を見られたら嫌われてしまうわ……」
「……」
クザンは黙っていた。
「中の者達は、許せません。アスラバキバキをお願いします」
「と、いわれますと」
「全身の骨をバキバキにして下さい」
「わかりました」
私達は薄暗い倉庫の中に入った。
「ぎゃああああーーーー」
倉庫の中に断末魔のような声が響いた。
「な、何事だ」
「ぎゃああああああーーー」
「じょ、状況報告をしろー」
「ぎゃあああああーーーー」
「ぎゃああああーーーー」
クザンが素早く倒していく為、男達は何が起きているのかわからないでいる。
薄暗い倉庫の中で怯えながら悲鳴を上げ次々倒されていった。
残すは、檻の中の裸の男だけになった。
楽しむ事を忘れ、檻の片隅に集まり怯えている。
「あなた達を、全く許す気にはなりませんが、何か言いたいことはありますか」
私が男達の前に姿を現わすと、男達はほっとして笑い出した。
「ふあはははは、ガキが何しに来た」
「よかったわ、あなた達が救いようのない人達で、クザンお願い」
「なんだ、おまえは」
「やめろおーー」
「このやろーー」
「ぐわあああーーー」
「ぎゃあああああーーーー」
最初クザンに攻撃を加えていましたが、武器も持たない裸の男達の攻撃はクザンには全く効きません。
結局全員動くことが出来無くなりました。
私は、男達を玉座送りにすると可哀想な女の人達に服を出してあげました。
その後二階を制圧して、ゆっくり皆の所へ歩いて行きました。
「だ、大丈夫ですか」
アスラ様が私に聞いてくれました。
こんなに強くしてくれてもなお、心配してくれるとても優しい魔王様です。
「はい」
私は、心からの笑顔を返します。
「中に悪い人は、いなくなりました。メガネさん、家族を助けに行きましょう」
「えっ」
メガネさんが驚いています。
「さあ、行きましょう」
メガネさんの家族は倉庫の二階に閉じ込められていました。
「おばあちゃん、おばあちゃん」
「おお、チッカかい、酷いことをされなかっただろうね」
「ええ、大丈夫」
メガネさんはおばあさんと二人暮らしのようです。
よかったです。
アスラ様が涙ぐんでいます。
それをバレないようにしています。
とても可愛いです。
「アスラ様、一階にも大勢の人がいますがどうしますか」
「そうですね、帰るところがある人は帰ってもらって、行き先の無い人は商館で少し保護しましょうか」
さすがはアスラ様です、完璧なお返事です。
「メガネ、いえチッカさんはどうされますか」
「あの、厚かましいですが、しばらく祖母と私も保護していただいてもよろしいですか」
「それならチッカさんは、一度うちで働いてみて欲しいのですがどうですか」
「本当ですか。是非、雇って下さい!」
「では、一度商館へ帰りましょう」
アスラ様が商館へ帰るように移動魔法を使いました。
こうして、メガネさんの家族の救出は終りました。
「うーーん」
「どうしたのですか、アスラ様」
商館を魔法で修復して、落ち着いたところで食事を済まし、お茶を飲んでいる。
そこで、僕は悩んでいた。
「フォリスさん。闇の双龍ですか、このような人達がいて、泣いている人がいるなら、放置は出来ません。どうしましょうか」
「どうせ、裏にいるのですから、さっさと玉座に送ったらよいのではありませんか」
「お、お前達は正気なのか?」
コデルさんが、驚いている。
「何を驚いているのですか」
「……」
コデルさんは、目を閉じて考え込んでいる。
「いや、普通なら、手を出すべきでは無いと、言うところなのじゃが、お前達にそれを言うのがバカバカしくなった」
「では、ばあちゃんの許可が下りましたので、裏のお家へ、ごあいさつに伺いましょうか」
僕たちは、菓子折を持って裏のお家へ引っ越しのあいさつに行くことにした。
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