第34話 森の魔女
「魔王様、こちらになります」
チョカイさんに城内を案内してもらい、広い部屋に入った。
室内には、贅沢な装飾と、大きな机があった。
片側に二十名が座れるように、椅子が配置されている。
フォリスさんが、港町ドレークから、ロアドさん、バンさん、エドさんを連れてきてくれた。
「移動魔法が、僕とフォリスさんしか使えないのはつらいね」
「それならば、森の魔女を陣営に迎えてはいかがでしょうか」
チョカイさんが、提案してくれた。
「も、森の魔女ですか。あの方も難しい人なので、無理なのではないでしょうか」
ロアドさんが難色を示した。
「ふふふ、では、森の魔女には僕が会ってみます」
「き、危険です。あの魔女は強力な攻撃魔法を使うと聞いています」
ロアドさんが慌てています。
余計に会ってみたいと思いました。
ロアドさん達が席につくとチョカイさんの配下が次々席を埋め、結局全席埋まり、十数人が壁際にたっている。
メイドさんが数人入ってきて、お茶を運んでくれている。
それが、終るのも待てないで、チョカイさんが声をかけてきた。
「魔王様、あなたは何を求めてお立ちになったのですか」
「魔人の繁栄です。その後は人間の国と共存共栄です。まずは魔人の国を統一したいと思います」
「おおおおーー」
低いどよめきが起った。
「次はルチョウ領、リョウメイ領、アルアド領を攻めたいと思います。オウブさんとチョカイさんには、スザクを十体ずつ預けますので先鋒として戦ってください」
「はっ」
「ただし、オウブさん、スザクだけで攻めるのは禁止です」
「な、何故ですか」
オウブさんが疑問をぶつけてきました。
当然の疑問です。
「それは魔人の国の、未来の為です。僕は、近い未来勇者に殺されるでしょう。その後は、皆さんにこの国を託さなくてはなりません。その時の為です」
この国では、長い年月の中で、魔王が生まれ、勇者に殺されるという歴史を繰り返しています。
きっと今回もそうなるでしょう、なぜなら僕は勇者に嫌われていますから。
「そ、そのような事にはなりません。させません。うっうっう」
突然、フォリスさんが泣き出してしまった。
今日初めてあった人達ばかりなのに、顔を押さえて泣き崩れるフォリスさんを見て、涙ぐんでいる人が結構います。
意外といい人ばかりの様です。
「わがあるじ」
クザンが小声で耳元に話しかけてきた。
「何ですか?」
「はっ、スザク十体にシュザクを付けていただきたいのですが」
「なぜですか」
「スザクは人の言葉を理解するぐらいの知能はあります。ですが、細かい指示を的確に行う為には、シュザクの力が必要だからです」
「わかりました。スザク十体にシュザク一体を連れて行ってもらうことにします」
「はっ」
この後、内政についての打ち合わせなどが、行われ金貨五千枚を要求された。
要求の倍を、渡してちゃんと返却することを約束してもらった。
返してもらわなくても、いたくもかゆくもないけど、その方がいい気がしたのでそうした。
長い間会議は続いていたが、僕の心は森の魔女の事で一杯だった。
「じゃあ、行ってきます」
「くれぐれも、気を付けて下さい」
オウブさんとチョカイさんと、数名の兵士が門の前で僕達を見送ってくれた。
行き先は森の魔女の所です。
その後、僕達一行は森から一番近いルチョウ領を攻める事になった。
チョカイ領の北には深い森があり、その奥深くに魔女が住んでいるというのだ。
まあ、人里離れた森の中で暮らす人など変人に違いない。
会うのが楽しみだ。
街から続く道を進んでいくと、森の中に小さな村が有り、そこで森の魔女の事を聞くと村人は、魔女の事を知っていた。
村人の中に、魔女の事を悪く言う者はいなかった。
いくつかの村で、宿泊をしてどんどん奥深くへ入ると、とうとう道が無くなった。
普通森の中には魔獣がいるはずだが、ここまで一度も会わない。
魔女が村人の為に狩っているのだろうか。
「見つけたのじゃ」
こんな時には、ランロンが役に立ってくれます。
広く森の中を探し回ってくれたので、魔女の住みかを見つけることが出来ました。
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