第35話 対決

「まがまがしい来客がきたもんじゃ」


 森の中に開けた空間があり、そこにボロボロの家があります。

 ド素人の手作りみたいです。

 その家の前に黒い服と黒い帽子に長い耳の魔女が、待ち構えていました。


「あの、森の魔女様ですか?」


「ふふふ、こんな森の奥深くまで来るとは、物好きな奴じゃ」


 うーーん、こっちの質問には答える気が無いようです。


「すみません、私はフォリスです。森の魔女様ですか?」


 今度は、フォリスさんが名乗ってから質問しました。


「どうせろくな用件じゃ無いだろうのう」


 やっぱり、聞く耳が無いようです。


「あのーー」


「レムレム、そのものを、追い返すのじゃ」


 魔女の横に三メートルほどのゴーレムが現れた。


「スザク!!」


 僕は、スザク一体を呼び出した。

 ゴーレムよりスザクは随分小さく見える。


「ふふふ、お前もゴーレムが召喚出来るのか。なんだか、畑仕事の時に出てくる、蛾のさなぎのような奴じゃな」


 確かに色は似ています。でもゴーレムではありません。

 大きさではスザクの方が負けているので、魔女様は少し機嫌がよくなりました。


「話しを聞いていただけませんか」


「ふん、話しはそのゴーレムを倒してからじゃ。ゆけーーレムレム!!」


「スザク、全開だ!!」


 僕の声を聞くとスザクは、姿が消えた。

 まあ、ここにいる僕たちにははっきり見えていますが。

 ゴーレムの体にスザクが全開で突進したら、粉末になってしまった。

 しかも超細かくなったため、煙の様になっている。


「なっ、なにーーー」


 魔女様の目玉がとび出さんばかりに驚いている。


「これで、話しを聞いていただけますか??」


「このーー、ゴムゴム、こいつらを踏み潰せ――」


 魔女様が新たなゴーレムを呼び出した。

 話しを聞いてくれる気はないようだ。

 大きなゴーレムで、クザンの通常サイズと同じ位だった。


「クザン、消し飛ばして下さい」


 クザンは、巨大化すると、といってもクザンにとってはこっちが普通サイズですが、ゴーレムに向って突進します。

 ゴーレムは、腕で防御の姿勢を取りますが、クザンはお構いなしにぶつかり、ゴムゴムも煙にしてしまいました。


「うわーーーっ、ゴムゴムーーー」


「これで、話しを聞いていただけますか?」


「誰が、レムレムとゴムゴムの敵の、お前達なんかの話しなど聞いてやるもんかー―」


 ヘソを曲げてしまいました。


「クザン、構いません。踏みつぶして下さい。なんかこうぐりぐりと踏み潰して下さい」


 フォリスさんが、とうとう切れてとんでも無いことを言い出しました。

 しかも足をぐりぐりしています。

 クザンも少し半笑いで、魔女を踏み潰そうとしています。


「うわあーー!! わかったのじゃ、わかったのじゃ。話しは少しだけなら聞くのじゃー―」


 魔女様は、頭を抱えてしゃがみ込んだ。


「クザン、もう良いわ。元にもどりなさい」


 フォリスさんがクザンに命じた。

 魔女様に案内されて家の中で、お茶を出してもらった。




「うわーーーーん、うわーーーーーーん!!」


 魔女様が泣き出した。

 僕の話と、イルナがさらわれた話し、フォリスさんの家族が殺された話しをしたら泣いている。


「そして、私は、領主に襲われているところを、間一髪でアスラ様に助け出されたのです」


「よかった。よかったのじゃ。おーーい、おーーい」


 魔女様は、涙が止らない。


「それで、わしが、人間共を皆殺しにして、イルナちゃんを助け出せばよいのじゃな」


「ち、違います」


 フォリスさんが、あきれたように否定した。


「そ、そうじゃった、そうじゃった。わしがイルナちゃんのおばあちゃんになればよいのじゃったな。ふふふ、イルナちゃんの顔を見るのが楽しみじゃわい。支度してくる、しばらく待っていておくれ」


 何をどう勘違いしているのかわかりませんが、一緒には来てくれるようです。後でちゃんと説明が必要なようですね。やれやれです。


「あーーお待たせ、お待たせ」


 出て来た魔女様は、ドレスを着た、とても美しいグラマーな金髪エルフでした。


「げっ若い」


「ふふふ、エルフはあまり歳を取らないからのう。わしの名はコデルじゃ。よろしくのう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る