第30話 聖女の休日

 フォリスさんの姿になったシュザクに僕は名前を付けた。

 シュザクのシュとアスラのラで、シュラ。


「シュザク、あなたは固有名をシュラと名付けます。今日からシュラと名乗って下さい」


「は、はい。ありがとうございます」


 シュラさんが、涙を浮かべ喜んでくれた。


 翌朝、隣の領地へゆっくり旅立った。

 何も知らないこの地を、僕はゆっくり一から情報収集し始めることにした。






「うわーーだまされたーー、だまされたーーー」


 わたしはエマさんに騙されて怒っている。

 学校が楽しいと言われて通っているけど、何日通っても楽しくない。

 小学校へ行っていないわたしは、中学の勉強にはまるでついて行けない、こんなんで楽しいわけがないのだ。


「エマさん、もう学校へ行きたくないです」


 家に帰るとエマさんに訴えた。


「じゃあ、明日はダンジョンへ行きましょう」


「えっ」


「その代わり、また学校へ行って下さいね」


 そんな感じでいつも、うまくあしらわれている。

 でも、ダンジョンへいけるのなら我慢も出来ます。




「あーエルナさん、エルマさんですね。毎度どうも、気を付けて行ってきてください」


 私はエルナ、エマさんはエルマという偽名を使って、父ちゃんからもらった暗黒の守りの指輪で、鑑定の妨害をして偽装している。

 暗黒の守りの指輪は、他人の鑑定を妨害して防御力を高める指輪で、見た目は真っ黒なかっこいい指輪です。


 レベル1のダンジョンは、攻略済みの三十階層までギルドに管理されていて、手入れも行き届いている。

 攻略が終っている階層は、どこからどんなモンスターが出てくるのかまで、わかっている。


 だから、中に入ると、自分の実力にあったモンスターと、比較的安全にたたかう事が出来る。

 私は、移動魔法で三十一階層に移動する。


「うおおおおー、後ろに回り込まれるなー―」


 ダンジョンの先から声が聞こえる。


「先客がいるみたいですね」


「では、もう少し先へ行きましょう」


 五十一階層に魔法で移動した。

 十階層ごとに中ボスがいるので、五十階層をさけて五十一階層にした。


「ここは、誰もいないみたいです。では、狩りを始めしょう」


 私とエマさんはパーティーを組んでいるので、倒せば二人に経験値が入る。

 それが嫌でパーティーを組まない人もいますが、私はエマさんに成長して欲しいのでパーティーを組んでいます。


 収納してある暗黒ロッドを二本出します。

 一本は私が使って、一本はエマさん、この武器は父ちゃんの突き抜けた付与があるので、この階層でも楽々狩りが出来ます。


「ぎゃあああーーーー」


 フロアーのモンスターが悲鳴を上げて魔石に変わります。

 朝からずっと狩り続けると、レベルが十ほど上がりました。

 こうして少しずつ地道にレベル上げをして、強くなるしかありません。

 父ちゃん達は、どこまでレベルが上がったのでしょうか。


「ほう、こんな所まで来ている冒険者がいるのか。……じゃまだどけ」


 後から来たくせに偉そうなS級冒険者が六人来た。

 わたしたちのF級の階級章を見ると余計に態度が悪くなった。


「じゃまとは何ですか!」


 エマさんも少し怒っている。


「ここも、モンスターがいないのか」


 わたし達が、狩った階層のモンスターはまだ再生していないので、このS級冒険者達はモンスターにあわずにここまで来たようだ。


「お先にどうぞ」


 次が六十階層なので先を譲った。


「うぎゃーーー」


 悲鳴が聞こえた。

 その声が人の声のような気がしたのであわてて、下の階層に駆けつけた。

 六十階層は広い空間になっていて、大勢のゴブリンがいる。このゴブリンは、見た目は普通だが強さは森のゴブリンの比では無い。凄く強いはずだ。

 六人は血だらけでゴブリンに襲われている。


 私は右手のロッドを前に出した。

 金色の魔法陣が出る。


「ホーリーピルム!!」


 私の聖なる魔法の金色の光が、ゴブリンに突き刺さり次々倒れていく、二百体位のゴブリンが一瞬で魔石に変わった。


 六人の冒険者を見ると命は失っていないようだ。

 雑魚がいなくなるといよいよフロアーボスが出てくる。

 二体のオーガだ。


「ひいいい」


 後ろで悲鳴が上がっている。


「エルマさん、六人と入り口の結界へ待避してください」


「はい」


「いでーーー、くそーー、なんでもっと早くたすけてくれねーーんだーー。」


 安全なところに付いたら途端に強気になりました。

 厄介な人達です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る