第9話 御領主様

 この地を治める領主としては、堅固すぎる城に住んでいるようだ。

 まあ、悪いことをしている奴は、城の守りが堅い。外壁の中央に巨大な門があり行く手を阻む。


「ふふふ、上から下ろすタイプの門か。これでは普通の人間なら一人では、やぶれないだろうな。まあ、天帝の勇者なら一人でも開けるだろう。当然それより強い天神の勇者も開けることが出来るはずだ。弱体化している俺に開けることが出来るか不安だが……」


 手を門に当ててほんの少し力を加えた。


 ドゴーーーン


 門は轟音と共に吹き飛び、城壁に突き刺さり地響きと共に城の一部が崩れた。


「なんだーー、何があったー」


 守備兵がわらわらと現れた。

 俺は、あまりの状況に少し動きが止っている。

 修理代結構かかりそうだなー、どうしようと、たじろいでいた。


「ぎゃーーー、いてーーー」

「うわあーー、やめろーー」


 兵士から悲鳴が上がる。

 兵士達は、何が起っているのかわからないだろうなー、などと思いながら次々足を蹴り飛ばし、行動不能にしていった。


「うろたえるなーーー、敵は一人だーー」


 すげー大声の巨漢が現れた。

 筋肉隆々と言うより肥満した大男だった。

 この城の兵士の総責任者だろうか、兵士が機敏に動き出した。


「どんな奴かと思ったが餓鬼じゃねえか」


 巨大な剣をかまえて笑っている。

 こいつは馬鹿なのじゃ無いかと思っている。

 巨大な門を吹き飛ばした相手に、勝てるつもりでいるのだ。

 まあ、見た目は、十二歳のがきんちょだからしょうが無いのか。


「ちっ、どんな奴かと思ったがただのでぶか」


「このがきーー、ぶ、ぶっころすーー」


 俺の軽いあおりでぶち切れた。

 こいつも、やさしい、いい兵士ではなさそうだ。


「ぎゃああああああ」


「痛がり方もやかましいなーー」


 両手、両足をへし折ってやった。

 こいつ程度じゃあ、オークごときでもまともに勝負にならんだろう。

 人間ももう少し鍛えないと、そのうちモンスターに全滅させられるぞ。

 ……あー、そのために勇者がいるのか。


「うわああああーー。ナドラ様がやられたー」


 兵士達が逃げ出した。

 まあ、あとで向ってこられても面倒なので、足を蹴らしてもらった。


「おい、ナドラ様、悪領主の部屋はどこだ」


「ぐぞーー、誰が言うかよー」


「さすが、たいした忠誠心だ。感動したぜ」


 ポキン


 おれは人差し指を折ってみた。


「ぎゃーーーー」


「へえーー、折れた腕の指でも折れると痛いんだなー。しかし人間の骨はやわらかいなー、ほとんど力がいらねーわ」


「ぐぞーーー」


「じゃあ、もう一本いっとく?」


「やめろーー、やめてくれーー」


 ポキン、ぶちっ


「うわあああああ」


 俺と、ナドラの悲鳴が重なった。

 なんと、小指を折ろうと思ったら、ちょん切れたのだ。

 俺はそこまでするつもりは無かったし、何より気持ち悪くて不覚にも悲鳴を上げてしまった。

 ナドラの悲鳴は、普通に痛かったからだろう。

 まあ、経験はねえが、指が引きちぎられるのは痛いだろう。


「どお、ナドラ様、案内出来そうですか」


「……」


 ナドラ様は涙と鼻水とよだれを垂らした汚い顔でうなずいている。


「これは、返しておきますね」


 俺は、千切れた小指をナドラ様のポケットに押し込んだ。

 そして、ナドラ様のえりを無造作につかみあげて、両手、両足をぶらぶらさせたナドラ様を引きずって歩き出す。


「こっち?」


 分かれ道でナドラ様に道を聞く、ナドラ様は素直に、首を振ったりうなずいたりして教えてくれる。

 時々兵士に会うが、あった瞬間、ナドラ様をドサリと地べたに落として、兵士の足を蹴っておくのは忘れない。

 階段を上がると正面に大きな扉があった。


「この階は、兵士がいないね。領主様のお楽しみの場所と言うことですか」


「そ、そうです」


 俺が、丁寧に話している為か、ナドラ様の言葉遣いも大人しくなった。


「さあ、御領主様とご対面と行きましょうか」


 立派な扉を少し開けて、そこにナドラ様の頭を突っ込んでみた。


「き、きさま、ナドラ、ここには絶対入るなと言ってあるだろうがーー!!」


 すごい剣幕で怒っている。

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