第37話 極限状態の中の熱狂のゆくえ

 この作品のテーマのひとつを述べるなら、まさに、これ。


極限状態の中の熱狂の行方


 これに尽きるでしょう。

 1945年の戦争末期、戦闘レベルの勝敗で言えば明らかな「敗北」に至ろうとするちょうどその頃の、日本という国の中で起きていた事象を具現化したのが、この作品であると言えます。

~ 別にこの作品だけではないけど、本作品もその一つであることは確かです。


 以前別のところでも述べたけど、映画「連合艦隊」とよく似た手法も、使われています。


当時の記録映画を用いる。


 本作品でも、「連合艦隊」ほどではないが、それが利用されている部分がありまして、ただ、割合的には「連合艦隊」のほうが多いようにも思われるが、印象に残る度合いで言うならば、明らかに、こちら「太陽の子」のほうが、上でしょう。


 黒崎氏がかの作品を参考にしたか、はたまた意識したか、あるいはそれは一切意識さえしていなくて偶然同じ手法が使われているだけかはわかりませんが、歴史上の記録映画を利用して作品に落とし込むという手法は、確かに、利用の仕方如何ではインパクトを与えられるものであることがわかります。

 小説なんかの場合はどうしても文字だけですから、なかなかその効果というのは見えにくいところがありますけど、映画というのはなんだかんだで映像として目に訴えかけていきますから、そりゃあ、印象に残らざるを得ないわな。


 もっとも、歴史的な記録映像であれ、黒崎氏が作った物語であれ、それは1945年という特定の時期の日本という国のある一部分を切取ったものであります。そこはまったくの共通点なのね。

 そして、その切取った部分を組合わせていくことで、当時の極限状態下における熱狂に支配された世界の人々の姿が、形を変えて現れてくるというわけです。

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