第30話 自暴自棄でなければ、いささか荒唐無稽でも

 じゃあ、何がどうなんだという表題を、出してみました。


 自暴自棄的に陸軍に志願した研究生を呼び戻した教授は、その院生に、


「阿呆(アホウ)!」


と、目の覚めるような「喝!」を入れたわけですが、さて、いささか暴走しがちの主人公が言うところの、京都の「町」に原爆が落とされるところを比叡山に登って「確認」するという意思表示に対しては、教授は、「阿呆!」と怒鳴ったりなどしなかった。静かに、こんな趣旨のことを述べるにとどめた。


私が君くらいの年なら、同じこと、考えたかもしれんな。


 いやあ、その手のこと、私も、年長者の方から何度も言われたなぁ(苦笑)。

「わしが20歳若ければ、同じようなことを相手に言っただろうな」

とかね。もちろん、苦笑交じりにだけど(汗汗)。

 要は、「君も若いねぇ・・・」ってことよ。

 良くも、悪くも、ね。


 いささか荒唐無稽どころか、狂気と言ってもいいほどのことを周囲に述べる主人公に対して、年長者である教授は、それなりの理解を示したような言動をされた。

 しかしそれは、そのような行為を全面的に肯定しているわけではないことは明らかであるとともに、それを頭ごなしで否定するつもりはないとのことでもある。

 もっともそれは、他人であるからというのも、あろうね。


 一方で、母(どうやら実は義母らしいとの情報もあり)の弁としては、特に怒鳴ったりヒステリックになったりしないものの、むしろ、好きにしなはれやというスタンスは教授と共通な点もあるものの、さすがに肉親となれば、教授のように「外面(ここは「そとづら」と読む)」だけで対応するわけには、行かんわな。

 それで、あのクライマックスへと向かうわけやねん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る