第4話 ドラマを手掛けたかったそうな。

 これは映画云々ではなく、彼のインタビュー映像を見ての話ですが、彼がなぜテレビ局、それもNHKに入局したのかというのは、どうやら、ドラマを制作したかったからだとのこと。


 確かに、私らが大学生の頃、1990年前後は、バブルの終期から崩壊に向けての時期でありまして、まあその、「景気の良さ」感も半端ではなかった。

 岡山クラスの街はまだしも、大都市圏ではバブルに浮かれ、崩壊後も、まだその余韻が残っていた頃です。

 私なんて、とある早稲田大学出身の司法修習生(当時。現在は弁護士をされているはず)方に、ある時、こんなことを言われたよ。


「君はなぜ、司法試験なんかやろうとしている? 就職も、いいのに・・・」


 その方、何かを感じられていたのではないかと、今も思っている。

 で、その理由を答えたら、こんなこと言われたよ。


「感心しないな・・・。(私が)金儲けに走りかねない(そういう危惧がある)。第一、養護施設にいたという事実は、消えないだろう・・・」


 まあその、司法試験を受験しようと思った動機については、ここでは省くが、養護施設というキーワードが出たことは、これで予想がついたでしょう。

 問題は、そちらではない。もちろんそちらにも、クズ論点として排除できないものがあるにはあるが、そちらは今ここで論じません。


金儲けに走りかねない。


 ここやねん。

 確かに、わしは、そういうところ、あったなと思う。

 それゆえに、金もうけどころか・・・、ってな話になって今に至っているのは、確かに、ね・・。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 さてひるがえして、彼の話に参ろう。

 彼は当時、文学部の学生でした。

 私とは正反対の学生生活を送っておりましたね。

 まあ、聞けば聞くほどにうらやましい限りやね。

 書いたとおり、学校にも行かなきゃ講義にも出ない、下宿はほぼ梁山泊も同然。

 そんなので、さあ、どっか行こうと思いついていった先が日本海側とか何とか。


 で、そんな調子であれば、テレビくらい見る時間は十二分にある。

 当時、かれこれドラマやっておったわな。

 わしは、そんなもの見るヒマ、なかったけど(今もないよ)。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 彼の人生観というのは、私のように「制度を使ってのし上がる、それが無理でも最低限のしのぎを行って、テメエのやるべきことをする」というのとは違っておって、まあ、違うのは当たり前やけど。

 要はね、わしなんかが考えているような人生観なんか、はるかに超越したところから物事を見る習慣が、子どもの頃からついていたように思われてならないのよ。

 そういう人間は、ほれこのとおり、遊び人のように見えて、確かに遊んでおいでではあったのだが、そういう人間でないと、出来ない「仕事」というのが、逆説的にあるわけや。


 そこから考えるに、彼にとっては法学部や経済学部なんかに行く必然はまったくと言っていいほどなかったのだろうな。

 理系学部なんて、とんでもない。まして医学科なんぞ、論外やろ。

 そんな彼の選択した先が、天下の京都大学の(ここは確かに大きなポイントだぜ)文学部ってわけですよ。


 かと言って、彼はいわゆる「留年」なんかをしておりません。

 ストレートで卒業して、NHKに入局しております。

 そこはやっぱり、彼らしいなと思うけどね。

 単にだらだら仲間ごっこに浸って留年して・・・、みたような人らとは、違うよ。

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