第3話トウメインと副作用

私は東明(あずまあきら)。


かつて人体を完全に透明にする薬『トウメイン』の開発に成功した天才科学者だ。


しかしトウメインには驚くべき副作用があった。

あなたはトウメインの副作用について知っているか?


(いいえ、知りません。教えてください)


トウメインには、いぼを増やす効果があったのだ。

いぼが増えるだけならまだ良い。

しかし、増え続けると細胞分裂の限界に達して死んでしまう。


(と言うと?)


トウメインには、いぼを増やす効果があったのかもしれないのだ。

いぼが増えるだけならまだ良い。

しかし、増え続けると細胞分裂の限界に達して死んでしまう。


(さっきも聞きましたよ)


間違い探しだよ。


そう、何もかも間違いだったのかもしれない。

私は……い、いや僕たちはトウメインで世界を救うつもりだった。


いぼだらけの世界を救おうとしていた。


いぼは世界を覆い尽くしている。

いぼはどこまでも増殖していく。

いぼはどこまでも広がっていく。


いぼはいぼを呼ぶ。


いぼは確かに増える。

いぼはどんどん増えていく。

いぼはどんどん増えてしまう。


しかし、いぼは増えすぎている。

この世界にいぼは必要なのか?


だったら本当に必要なのはいぼ治療薬の方じゃないか?


余計なことを考えるな。研究しろ、東明(あずまあきら)。


これは私の物語なのだから。


◆◇◆◇◆◇◆◇


私は東明(あずまあきら)。


最近、勃起薬を飲んでも勃起できなくなっていることに気がついた。


勃起薬の効果が切れて、勃起できなくなった。

勃起薬が効かなくなってしまっているのだ。


おかしい……。


いぼの数が増えすぎたせいだろうか?

勃起薬が効かなくなったのはそのせいか?


いや、なんというか飲んでても勃起しなかったんだけど

勃起薬を飲まないと、いぼがいぼを呼んでしまう。


もしかして勃起薬じゃいぼは治らないのか


私は慌てて薬局の親父に相談することにした。


「ちょっと!いぼが増えるんだけど!どうしたらいい?」


(いやぁ……。それは……私にはわからないな……)


「そっか……ごめんね……」


(いや、謝らなくってもいいんだよ。うん、全然大丈夫)


「ははは……」


「ところで親父、いぼを治す方法はあるのか?」


(いぼを治す方法ねぇ……。そうだな。

 いぼを治したいなら、いぼを潰せば良いんじゃないかな?)


「ええぇええええええ!!

 親父、あなたはトウメインの副作用を知っていたのか!?」


(いや、知らなかったけど……)


「そうか、知らなかったけど、いぼは増え続けていたんだな……」


ああ、増えていたとも。


◆◇◆◇◆◇◆◇


私は博士、東明(あずまあきら)。


勃起薬と勃起不全用の薬を買っていた。


だから急いで薬局の親父に相談した。


「ちょっと!勃起薬と勃起不全用の薬買ったんだけど!」


(へぇ!まいどあり!)


「もしかして勃起薬だけだといぼは治せないのか?」


(なんですって?どういうことだ?)


「いや、だから勃起薬だけではいぼは治らないんだよ」


(いぼを治したいなら、いぼを潰さないとダメだ)


「なんて奴だ、トウメインの副作用を知っていただなんて」


(知らないよ)


「知ってるじゃん」


(いや、知らないけどさ)


そうか、知らなかったけど、いぼはいぼを呼んでいるんだな。

そうか、知らなかったけど、いぼは増え続けていたんだな。

そうか、知らなかったけど、いぼを治す方法があるんだな。

そうか、知らなかったけど、いぼを潰せば良いんだな。


いや、待て。本当にそれで合っているのか?

いぼを潰してはいけないのではないか?


私は慌てていぼ医師に相談することにした。


「いぼ医者!

 あなたはトウメインで透明人間になれることを知っていたか?」


(いや、知らなかったよ)


「やっぱりか……」


(もしかしたら、いぼで困っている人がいて、その人のためにトウメインを開発したんじゃないのか?)


{なにぃ!そんな馬鹿な!私はトウメインで好き勝手したかっただけだ!例えばエッチなこととか!」


(うわっ!最低だ!この勃起薬は没収する)


「いや、ちょっと!それじゃあ、勃起できないじゃないか!」


(勃起できないのは自業自得だろう)


「じゃあいぼ医者は何の薬を売ってるんだ?」


(いぼ治療薬だよ)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る