第7-1話 ♥大♥ 大部変わった部屋にて

「有希の話をするには、ちょっとこの場を離れなきゃ、なのよね」

 ナノカが言った。


 そして、ナノカは、バイバイと僕と角の童女たちに手を振った。

 

「「ばいばい、ナノカぁ」」

 童女たちが一斉に手を振った。……ワケワカメちゃんなナノカの話を聞いていたのか。


 童女たちに手を振り返しつつナノカはつま先から順に銀白の球になっていく。

 

 宙に生じた銀白の球のみが浮かんでいる。

 ナノカの消失を少し寂しく思いながら、僕は球の変化を待つ。

 そのまま消え去るか旺鉄の人形少女ドルフィーナに戻るか、そのあたりだろうと思っていたら違った。

 

 僕の視界が一瞬で暗くなり、身体がふわりと軽くなった。

 ナノカの声が響く。

「有希の魅了が届かない場に向かうわね」

 

 ✧

 

 少し経つと、銀白の壁が周りを囲ってていた。暗さに慣れれば見えるくらいに壁が仄かに発光している。

 身体が軽くなったということは、下りのエレベーターのようなもの。たぶん下向きに移動しているのだろう。ならば再び地下に向かっていることになる。

 さて、何が待つのかな……

 

 ✧

 

 灯りが点くと……そこはバーだった

 S.F.Aシークレタートフォーラのプレイヤーは、この手のバーに馴染みがある。破壊不能オブジェクトな建屋の中にある、情報交換ポイントのひとつとして。


 ただ、バーの真ん中にぽつんと立った僕は、何やら落ち着かない気分。周りをカウンターがぐるりと取り囲んでいる。その背後は円形の壁面。そして、三方から、笑顔のお兄さんが僕を見つめている……ほぼ正三角形をなすお兄さんに囲まれていた。

 

 ここはS.F.Aシークレタートフォーラの中なのか?

 お店の内装なんてバーチャルにいくらでも生成できる、はず。こんなバーの内装であっても。


 などと思ううち、脇に一体の女体が現れた。


 身長は150センチメートルもないくらい。顔つきはもう少し大人な感じだけれど、ナノカとすごくよく似ている。ただ、あと、胸とかお尻とかがなんていうか……むっちりしている……で、なんで上半身が裸なの?


《ほれほれ、どうだ。ほのかはエロエロなわがままボディじゃろう》


 脳内の真由美さん声が響くと共に帆花ほのかとの漢字が網膜に浮かぶ。

 

「また夢魔ティーナかいっ」

 むっちりした雰囲気(?)がぶち壊しな脳内ボイスに突っ込んでしまう一方で、この謎めいたバーに、まぁ、見知った存在が現れたわけでちょっとした安心感もあったり。


 が、帆花ほのかというらしい女体が、クネクネしながら上目遣いでちろりと舌を出すとそんな気分も吹っ飛んでいった。


帆花ほのかでぇす。若妻でぇす。」

 ……いいから、その両手で、手ブラとかいうのでバストを強調するのやめてくれ……。


 帆花ほのかの後ろにナノカがさっと現れた。

 ナノカの方は先ほどと同じ制服姿。


 帆花ほのかから視線を外し、ナノカに聞いた。


「ここだと……有希の話ができるっていうわけ?」

 ✧


 二人の話を聞くに、笑顔のお兄さんが僕らを見守るこのバーの名は、「新宿二丁目 最後のゲイバア」、らしい。S.F.AシークレタートフォーラとかのVRMMOのバーではなく、この地球の地下に現に存在する。


「営利文化活動という奴、よん」

 帆花ほのかの方が、この最後のゲイバアの立ち位置を話しはじめる。ゲイバアの話を聞きたいわけではないけど、聞くしかないようだ。

 

 この地下ゲイバアは、外界と旺鉄の膜で隔てられている。ストレンジ物質を主成分とする旺鉄の膜は、あらゆる作用反作用の通過を見逃さない……そのため、バアの中でのやり取りが外に漏れていないかプライバシーを物理的に担保できる。

 

旺鉄の膜の果たす役割は理解できた。この部屋での会話や念話の内容が外に伝わる際に、旺鉄の膜がすべてを把握する。


 そこまでしてゲイバアのプライバシーは守るべきなのかは知らないけれど。

 

「ふふふ~ん。つまぁり」

 夢魔ティーナの依代の帆花ほのかがにじり寄ってきくる。


「年上女属性なノンケくんが、この部屋で若妻帆花ほのかのボディを誰にも気づかれることなく堪能できるというわーけ。ゲイバアで初女体はじめてなんて、ノンケ君らしーい背徳的なシチュエーション」

 わけ分からんこと言い続ける帆花ほのかさんが眼前に迫る。


「あのね。帆花ほのかの身体もストレンジ物質製なんで。その手の行為は考慮してないのよ」

 それまで黙って夢魔ティーナ帆花ほのかが話すに任せていたナノカが冷静な声でツッコミを入れた。

 

 交わるな危険……て、か。


「もう、ツレナイこというな、妹よぅ」


 夢魔ティーナ帆花ほのかさんが無駄に可愛い声ですねた。


--------------


p.s.

 実は、本作の隠れたテーマはLGBTの中のB(バイセクシャル)&T(トランスジェンダー)なのです。もともと書いてたストーリーがちょっとL(レズビアン)&G(ゲイ)な方々に誤解を招く表現なのかなと思えてきて、ちょっといろいろLGBTのお勉強をし直して、更新が遅れてしまいました。すみません。。

 これから改めて、先に進みたいと思います^.^


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る