第10話 ミッションとカルマカード 4

 俺はおそるおそるズボンの左ポケットに手を入れる。


 すると、冷たい物に触れた。


「……これって……」


 俺は中の物を取り出して見る。


 ……どう見ても銀貨だよな。


 俺はズボンの右ポケットに手を入れると、中の物を取り出して見る。


 これがサラからもらった銀貨だ。所持金がないのはつらいだろうからと、仕事に行く前に渡してくれたのだ。


 ってことは、銀貨が1枚増えたのか。


 太股に何かが触れたと感じたのは、川柳を読んだあとだ。

 川柳を読んだことが無関係とは思えない。


 不思議な現象に首をひねっていると、あのスキルのことが思い浮かんだ。


 これがチート川柳か!


 スキルの発動条件がわからないから間違っているかもだが、チート川柳が発動したのなら何が起こっても不思議ではない。


 サラが使う真空波(大木をも切断する鋭利な風を起こす)はもちろん、様々な現象を引き起こすという魔法もスキルに含まれるらしいからな。

 

「ちょっと、そこのあなた!」


 声のした方へ顔を向けると、紫色のローブをまとった人がこちらを見ていた。


 その人の前には小さな机があり、不思議な模様が描かれたカードや水晶玉が置かれている。

 

 ああ、占いか……。


 先輩が好きだったな。





 

 俺は壁から背を離すと、その占い師の前へと行く。


 すると占い師がこちらを見上げて言った。


「悩みがあるって表情をしていた。ひとつ占ってみない?」


 短く切った水色の髪に、美しい白い肌。

 くりくりした灰色の目が印象的だ。


 年の頃は12か13。


 とてもかわいらしい顔をしている。

 女性アイドルグループにいそうなほどだ。


 けど、この子の性別はわからない。

 このくらいの歳だと女子のような男子もいるからだ。


 胸で判別しようにも、この子の胸は平ら。

 男か女か判別しようがなかった。


「いや、いい。今、持ち合わせが少ないんだ」

「そうなの? それなら出せる額でもいいよ」


 俺は首を横に振った。


 こんな子供が働いているのだ。お金を落としてあげたいところだが、今の俺は稼ぎのない居候。心を鬼にして断る他ない。


「わかった。無料ただでいいよ」

 

 え? お金に困ってるわけじゃないのか?

 

 …………もしかして占ったあとに料金を請求するパターンか? 『無料ただでいいよ、なんて言っていない』と語り、普通の料金を請求するといった。


 だが、俺にはこの子がずる賢い子には見えない。


 …………ひとまず信じてみるか。

 俺は置かれた椅子に腰を下ろした。


 これからこの子に占ってもらうわけだが、その前に聞いておきたいことがある。


「君って、女?」

「ふぇ!」


 小さな占い師は素っ頓狂な声をあげた。

 こんな質問をされるとは思わなかったのだろう。


 小さな占い師は頬を赤らめると、「女だけど」とぽつりと言った。


 へえ、そうなんだ。


 まあ、12、3歳なら胸が平らなのはめずらしくない。

 今後の成長に期待だな。


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