第20話

夏休みまで!あと数日である!

日々モンスターとの戦いに明け暮れまくっている我がハンター養成校も例外ではなく、学生達は浮足立っていた。


既に落第組はこの学校にいない。

この段階でクリアできない様ならばもう無理だ。最終日にクラスメイトに慰められながら恥を晒して帰るよりは、こっそりと地元に帰る事を選んだという訳だ。


では俺たち合格組はというと。

4分の1くらいは学園に残りつつ狩りのペースを落としてハチマン観光。

もう4分の1は旅行だったり、長期の何かをする感じだったり(俺とか)。

残り半分くらいは実家に帰省だ。


本来なら俺も実家に帰省だったのだが、サモナースキルをそろそろ活かすため…………!

すっかり相棒になったミユキも誘ってみたが、実家に経過報告をするとかなんとかで帰る事になった。かなり悔しそうだったが、あれはお祭りに行きたいという事だったんだよな?

どうにも根が陰の者だからか、人から自分への好意を疑い気味になってしまう。なんか緊張するし……。凛風はモンスターなのとテイムできた事もあり、なんとなく無条件に信頼してしまうけども。


そして今は、その凛風と模擬戦をしている。真剣でだ。


気弾をファイヤーボールで相殺し、互いの刀と拳がぶつかり合う。

ここまで、という念を凛風に送り、芝生に寝転ぶ。凛風も隣に転がり、人の腕を枕にしながらもぼーっとしている。

表情は変わらないものの、とてつもなくご機嫌である。

あれから分かったのだが、凛風を使役して敵を倒す事はできないが、俺が凛風と戦う事はできる様だった。

おそらく契約の「俺が凛風と戦って倒す」という内容に沿うからだろう。

たまに扱いてもらっているが、狩りよりかなりハードだ。なんせ能力値的には★4〜★5のモンスター。向こうも殺しにかかる事こそないものの、手を抜く事は一切なく俺をボコボコにしてくる。

これは俺の予想なのだが、凛風の知能は通常のキョンシーより遥かに高いが、その殆どを戦闘に費やしている気がする。ベッドで押し倒されたのも、なんか俺が喜んでそうだからとかでやってる様だし、そこら辺急に頭悪くなってない?……でもこれは未だに止めていない。俺が喜んでるのは事実だ。


まあ、本人が戦いたがってて、それを俺が止めちゃってる以上、定期的に稽古をつけてもらって、あわよくば倒すしかない。致命傷を受けてもサモナーのモンスターは復活できるし、凛風も多分怪我とかなんとも思わないタイプだ。


翌日は狩り。1学期最後の狩りだ。

知らない場所に行って怪我する訳にはいかないので、いつもの妖怪の山である。


「新しい刀の感覚を試さないとな……」


そう、夏休みに向けて、新しい刀を作ってもらった!素材が集まらなかったので、結局手負蛇の魔石を核にして、手負蛇の牙を素材とした。


「髪切より鋭さはやや落ちますが、耐久性はこちらのが上。★3素材ですから、当然ですね」


とは鍛冶屋のお兄さんの談。

そこに河童の魔石を合成し、刀を使いすぎて滑りが出た時に洗い流せる様にした。他にまともな効果になり得る素材がなかったからだ。

合成は上書きできるから、これもまた良しとしよう。


すっかり初期刀面をしているもう1本の刀は、★1の素材を使って作った刀。カラカサなども使われているらしいが、売り場で売られている最低レベルの刀よりはマシという程度。の割にお前は本当によく持ってるよな。

そちらより大きめの刀となっているので、特に柔らかめの相手には大きい傷を与えられるだろう。


「よっ、ほっ」


入り口を進み、単独でいた小鬼に気付かれる間もなく一閃。

レアドロップである角を回収して、続けて見つけた餓鬼4匹の群れを殲滅。


「うん、やっぱり★1だともう試し切りにもならないな……」


この世界にはモンスターと対峙するにあたって、2種類の基準がある。

戦って勝ち目のあるライン。

苦戦せずに倒す事のできるライン。

あくまで根拠のない線引きだし、相性によって変わり得るものではあるが、俺に限らず養成校の生徒は大体が★1をまとめて倒せるレベルになっている。

まだ体力に余裕はあるし、ナンバの祭りに備えてもう少し金策をしておきたい。


実際に敵の存在を察知できるナツミほどではないが、沢山のモンスターの経験を吸収してきたこの体もなんとなくだが勘でそれらしき気配を探ったりできる。察知スキルには遠く及ばない、あくまで勘だけど。

勘に任せて探索していると、ラッキーな事に2匹の★2が争っていた。

火鳥と大蜘蛛だ。

火鳥は糸に絡め取られてかなりの劣勢。後々フリーになられると大変なので、先にファイヤーボールで大蜘蛛を牽制して、火鳥を切り捨てる。

断末魔の叫び声と共に大蜘蛛に向き直り、ファイヤーボールを連射。詠唱がいるためナツミの矢程ではないが、そこそこに怯ませた所で接近、顔面部分を両断する。


素材と魔石を回収。

今のは隙をついたからだが、単体であるならば★2でもさほど苦戦しなくなっている。やはり刀術が3に上がったのがデカい。

このまま調子に乗って★3に1人で挑みたいくらいだが、抑えて入り口の方に戻りつつ、はぐれ気味の★2を探す。


「おっ!あー……唐傘ね」


途中で気付かれて苦戦したのも今となってはいい思い出。斜めに切り裂き、真っ二つにする。

こいつも★1にしてはいい素材になるから、初心者が倒せると嬉しいんだけどな……。


「まあ……こんなもんか」


学園に戻り、購買で売買をする。

多少傷ついた河童の鎧も大蜘蛛の糸で補強してむしろ良くなったし、素材の残りをどうしようかな……。

購買のお姉さんに「オウミ領の素材をナンバ領に持っていけば高く売れるか?」と聞いてみたが、売れるけど★2ではそこまでする意味がないとの事。

発想は商人向きでえらい!と誉められたが、ごめんなさい、前世の発想です……この世界でも割とやられてるし……。


大蜘蛛の糸は汎用性が高いし、こいつを残して残りは売るか。

お祭りらしいしお金はあるに越した事はない。父さんからは年末は帰ってこいよ、とだけ。相変わらずこういうのを見ると、放任されているのか信頼されているのか微妙なラインだと思ってしまう。もう一つ仕事を頼まれたが、これは2学期でいいらしい。


ミユキ達クラスメイトにしばしの別れの挨拶をして、1学期をなんとか乗り越えた。

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異世界ハクスラハンター生活・スキルで成り上がり学園編 〇ニスの娼忍 @11030419

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