2話 クレソンのひと時2

アパート・マイオB棟407号室。


今日は天気も良くて、日差しがカーテンのすきまからクレソンの部屋の中を明るくする。クレソンはベッドで左を向く。すると顔に陽があたり、まぶして顔を顰める。そして右を向いた。パッと手を動かすと、なにか大きなものにあたる。




ん? なんだ? このゴツゴツしたものは?




と、眼を開いてみるとクレソンの隣でルーベンが寝ていた。




きぃぇぇええええ!!




うあああ! なんだよ!?




こっちのセリフだ! 何してんだよ! なんで俺の隣で寝てんだ、ルーベン!




なにって昨日の夜、お腹空いてさ、パンを貰いにきてぱっとベッドみたら気持ちよさそうだったんで、それでつい…… 。




うわあ、キモい。おい! 早く墜おちろ! 自分の檻に戻れ!




クレソンは寝ているルーベンを足で蹴った。




いたっ! おい、やめろ!




と、言いながら蹴られた衝撃でベッドから落ちていく。




いたた!! わかったよ!! くそっ!! ちくしょう!




まったく!




と、ルーベンはそのまま立ち上がり、ベッドルームから去っていった。




なんて不気味な朝だよ、これならまだウォーキングデッドにでてくるゾンビが目の前にいたほうがいいよ、まったく。




なんていいながらクレソンもベッドから降りて、リビングに向かう。




この部屋は1Ldkという広さだ。ベッドルーム1つ、リビング1つ、キッチン1つ、トイレとバスルーム。リビングは広めだ。




ソファーの真ん中には小さいテーブルがあり、目の前にテーブル。その横にキッチン。ソファーの奥にもう1つ大きめなテーブルに、本棚。そこを過ぎると、ベッドルームがあり、その奥にトイレとバスルームがある。




クレソンはリビングにいくと、ルーベンが冷蔵庫から飲み物を出していた。




なんだまだいたのか。




おはよう、クレソン、飲むか?




なんだそれ?




これはブドウジュース。




いいよ、おれは紅茶飲む。朝はコーヒーか紅茶を飲むんだ。




そうか、入れてやるよ。




と、ルーベンは冷蔵庫の右上にある棚を開けて、紅茶を取り出した。




おい、クレソン。コーヒー豆ないぞ? 紅茶にするか?




なんだって? もうないのか? なら映画館終わったらついでに買いにいくか。ルーベン、ルフナのオレンジペコ入れてくれ、ミルクも入れてくれ。




わかった。ああそうだ、テーブルに新聞あるぜ。さっき取ってきた。


ルーベンが紅茶用のケトルで紅茶を入れてる間にクレソンはテーブルのほうで椅子に座って新聞を読んでいた。




なあ、ルーベンお前新聞読んだか?




ああ読んだよ、なんで?




今日の新聞漫画面白くないよな?




漫画? あ、「マスクマン」な、今日のはたしかにつまらないな。




なんだよこれ? 「おれのマスクをゲイル君にあげよう、すればゲイル君はゲイになるよ。いいだろう?」ってなんだこれ? ウケると思うのか? しかもこのマスクマン、マスク取っちゃってるし。マスク取らないのが、マスクマンなのに。




たしかにな。




そこにベルがなる。




ん? 誰かきたな、ルーベン俺が出るよ。




と、ベルのボタンを押す。




誰だ?




ベルの向こうで男の声がした。「おれだ、トッドだ」と。




なんだお前か、来いよ。




と、鍵を開ける。




クレソンは新聞を持って、今度はソファーに座る。ソファーは布製で、紺色だ。




すると、トッドが部屋に入ってきた。




やあ、クレソン、ルーベン。




おはよ、トッド。




トッド今日新聞読んだか?




と、クレソンはトッドに聞いた。




いやまだだけど? なんで?




今日のマスクマンみろよ、酷いぞ。




マスクマンだって? 新聞の漫画の? ちょっと見せてくれ。




ほいよ。




クレソンはトッドに新聞を渡す。トッドはソファーに座った。




ルーベンはトッドに紅茶いるか、と聞くとトッドは要らないと答えた。




そうか。




なんだこれ? 今日の漫画面白くないな。




そうだろ? なんだよ、この話し。もっと無かったのかよ。知識がない俺のほうが上手く書けそうだよ。




言えてるな。




すると、カチッと音がした。ケトルが沸いたようだ。ルーベンはティーカップにティーバッグを浸したお湯を入れてから、ミルクを少々入れた。




よし! できた。温かい紅茶できたぞクレソン!




よしきた!




と、紅茶を貰う。




熱いな。この紅茶あったかいんだから♪



懐かしいな、それ。




と、クレソンとルーベンは歌いだす。




あったかいんだから〜♪




おい、ルーベン! やめろよ、ハモるなよ。




しょうがないだろ。




あっそ。




そこにまたベルがなる。




多分グレタだな。




と、ベルのボタンをおす。




だれ?




「グレタよ!」とベルの向こうで女性の声が聴こえる。




こいよ!




同じく、鍵を開けた。




グレタだ、今来るって。




クレソンは、またソファーに座る。奥に座る。




そこにガチャっと扉が開いた。来たのは友達のグレタ。




おはよう。




やあ、グレタ。どうした? そんな浮かない顔して。




来る途中ちょっとね。




そこにトッドが話しに割り込む。




グレタ! 今日の漫画見てくれよ!




なに?




今日の漫画、面白くないんだ。




はあ? あそ。




見ないのか?




私新聞見ないから。まあたまにみるけど、普段見ない。




そうなのか?




そうよ。




それで? なにがあったんだ?




と、クレソンは話しを戻す。




あ、さっき来る途中に変な男性に会ったの。たぶんホームレスだと思うんだけど。




ほう、それで?




それでそのホームレスに私の顔がライオンタマリンに似てるって言うの。




…… あぁ、ライオンタマリンね…… ライオンタマリン。




クレソン、トッド、ルーベンはこの話しにぎこちない行動する。




なによ?




まあ、なんだ、に、にてるよね少し…… 。




と、クレソンは言う。




は? にてるですって!? どこが!?




ライオンタマリンってゴールデンライオンタマリンだろ?




そうよ。




うん、そうだな。言いたいことはわかる。




そこにルーベンが言う。




つまりあれだな、髪型とか顔がゴールデンライオンタマリンに似てるってことだろ? あと雰囲気とか。でも、リスザルの雰囲気もあるな。




そうズバッと言ってしまった。




おい! ルーベン、に生で言うなよ!




だって!




なに!? 私があのゴツイ猿に似てるってことかしら!?




と、グレタは怒っていた。




違うだ! グレタ、聞いてくれ! 雰囲気がちょっと似てるってことだけだ! それだけだ、そうだろ? トッド!




ああ、そうだな…… 。




ほら!




あのね! さっきあったホームレスに言われるなんて惨めよ! しかもあのホームレスのほうが、私より猿顔で、汚なかった!




そうだな、グレタ。




もういいわ、もう。早くロングス行きましょう。あ、映画は何時からだっけ?




そこにルーベンが応える。




映画は11時からで。でも、クレソンがタクシーのひと時が嫌だってさ見るの。




なんでよ?




言わないぞ。めんどい。




なによ!




言っちまえよ、クレソン。




と、ルーベンが言う。


この中でルーベンだけが昨日ことを知っている。




いいよ! 気が進まない。




おい、クレソン何かあったのか?




トッドが聞く。




まあな、わかったよ! ロングス行き途中に教えてやるよ。行くぞ。




クレソンはブラウンのシンプルなジャケットを持って部屋の扉を開ける。




すると4人はクレソンの部屋をでて、喫茶店ロングスにむかった。クレソンは途中であのタクシーの話をするようだ。










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