1997年1シーズン

第1話 クレソンのひと時1

夜、アメリカ・テキサス州ダラスにて。


ダラス駅の近く、豪華な白い建築物に銀の星の小さな看板の真ん中には「マホーン」と書かれている。ここは講演会場だ。中では有名人や作家さんが講演している。おでこに怪我をつけた男の講演がおわり、続いて違う男性が案内される。




案内するのはこの会場を仕切っているドイツ系の男性マホーン・マウラー。




早速マホーンはつぎの講演をする人を呼んだ。




それでは続きまして、あの短編映画「adios.」で主人公の友、ジャン役を務めた俳優のクレソン・ラトナーです。俳優なのにお笑い芸人のような人で情熱的なのに冷静な男です。ではどうぞ!




と、そこに舞台裏からクレソンが小走りで出てくる。




は〜い! 皆さんどうも! クレソン・ラトナーです。初めての人は初めまして、知ってる人はどうも!


1つ言わせて貰うと、僕の講演は一味違います。笑いと僕の身に起きた事を話します。今日は新顔が多いので1つクスッと笑える話を話しをして終わりましょう。




すると、クレソンはマイクを近づけ昨日起きた出来事を話した。




クレソンに暗めのライトがあたり、お客さんはクレソンに注目する。お客さんは椅子に座って話を聴く。ここの規模だと110人収容可能。クレソンの講演は55人はいる。この会場は少し小さめの講演会場だ。




クレソンといえば、身長はアメリカでは少し低めでスマートな体型に「グリム」のモンローのようなパーマ、髪型をしている。少し違うのはブラウンが入っているところ。短編映画「adidas.」で脚本を書き、重要な俳優としても活躍した。講演家でもある。






昨日、友人と動物の話をしました。というよりかは友人が突然突拍子のない話をして来ました。動物を飼うならなにがいい? て。僕は答えました、うさぎ、猫、犬、フェレット、カワウソ、それから亀がいいと。


すると、友人はこう言いました。それはダメだと。どれか1つだけ、複数はキリがないと。なので僕はでは女性と答えました。そう、もし一緒にいたい動物と聞かれたら、女性と答えます。なぜ? だって一緒にいたら安心するし、可愛い、遊べるし夜の営みもできる。僕たちは動物なんだから。そうでしょう?




するとお客さんは笑っていた。




うん。だから女性がいい。友人はそのまま話せなくなりました。びっくりと正論すぎて。その時の友人の顔はけっさくでした。困ったパンダみたいだった。


ハハハハ!




クレソンも笑う。そこで照明は暗くなり、クレソンは舞台を降りた。今日の講演は終わり。




この講演会場には地下にBARがある。




そこにクレソンがやってくる。BARの店主にお酒の注文をする。




バーテン、サイドカーくれ。




わかった。




注文を終えると、そこにマホーンがやってくる。




やあ、ラトナー! 今日も笑いがポンポンポンポン

ポンって飛んでたな! やるな!




おお、マホーンかありがとう。




また頼むよ! 今日はこれからどうするんだ?




サイドカー1杯呑んでから帰るよ。




そうか、次も面白くしてくれよ!




ああ、わかった。




じゃあな!




と、マホーンは帰っていく。




するとどうぞとバーテンダーがサイドカーを作ってクレソンに渡す。




ありがとう。




クレソンはそんなに時間は掛からなかった。10分ぐらいでサイドカーを飲みほし、チップを置き、会計してBARを出た。今は12月で寒い時期だ。ダークブラウンのコートに黒と赤の線の模様が入ったマフラーをして、外にでた。凄く寒い。感覚はマイナス10度ぐらいの気分だ。すぐそこにタクシーがいたので、クレソンはその黄色いタクシーに乗る。




どちらまで?




3117 Lemmon Ave 75204のマイオB棟まで。




了解です。




タクシーは住所を聞くと、ドアを閉めさっそく出発した。マホーンの講演会場から家までは車で10分~15分だ。




疲れてタクシーで寝落ちしそうになるクレソン。そこにタクシー運転手の声を掛けられる。




お客さん! お客さん! 起きてください!




んあぁ!? なに?




起きましたか? 着きましたよ、寝てましたよね?




いいや、寝てない。まあウトウトはしてたかな。




タクシーはもう家の前に着いていた。クレソンの住む家はアパートだ。レンガ造りでレトロなデザインの造りをしている。A棟~D棟まであり、それぞれ7階建てのアパートだ。中に入るには鍵がいる。嬉しいことにエレベーター付きだ。




お客さん、もしかしてあの俳優のクレソン・ラトナーですか?




ええ、そうです。




映画見ましたよ! サインくれないか? えーと、この財布に。




いいですよ。




クレソンはタクシー運転手の白い長財布にサインをした。




こんな感じでいいですか?




はい! ありがとうございます!




君は白がすきなのか?




白い蛇柄がすきです。




え!? 蛇? なんてものを触らせるんだ! 蛇は苦手だ。




え? そうなんですか? もういいです。さっさと降りてください! ほら、はやく!


わかったよ! !




と、お金を運転手に渡し、クレソンはタクシーから降りた。




タクシーは去っていく。




まったく、なんてやつだ、くそ。




クレソンはそういうと、アパートに入った。クレソンの部屋は4階右奥407号室だ。クレソンはエレベーターから降りると、部屋の鍵を開け中に入った。




すると、そこに男がやってくる。




やあ! クレソン!




ん? ああ、ルーベン。




となりの406号室の長身の男だ。コミンスキー・メソッドのマイケル・ダグラスをもう少し、筋肉質にさせて、髪を伸ばしたダグラスのような男だ。黒髪だ。ひょうきん者で、いつも馬鹿なことをする。よく、クレソンの部屋に入り浸っている。




ルーベン、聞いてくれよさっきな、タクシーで帰ってきたんだけど。




と、マフラーやコートを脱ぎながらルーベンに話す。




どうした? なにかあったのか?




ルーベンはクレソンの冷蔵庫からジンジャーエールを取り出し、缶の蓋を開けて飲んだ。




ああ、さっきそのタクシー運転手からサインを頼まれたんだ、財布にって言われて。




それで?




その財布がな、白い蛇柄なんだ! 触っちゃったよ! 蛇嫌いなのに!




うわ、蛇か。でも死んでるし、財布だろ? 大丈夫だって。




だけど、キモイじゃないか。




まあ考えすぎだって。ほらこのジンジャーエール飲めよ。




このジンジャーエールは僕のだ、しかも飲みかけじゃないか。




あ、おっと。新しいのにするよ。




もういい。




そうだ、クレソン。明日用事あるか?




いやないけど?




じゃあ映画みるか? トッドとグレタも来る。




そうか、なにを観るんだ?




タクシーのひと時。




は?




あ、えーと、タクシーのひと時だ。




なんだそれ? 嫌がらせか? おい。




いやそういうつもりじゃ…… 。




じゃあなんだ?




たまたまだよ。




あっそ、わかった。その映画以外ならみてやる。おい、もう帰れ、俺はもうシャワー浴びてねるよ。




ああわかった。


ルーベンは自分の部屋へと帰って行った。




まったく。あいつは。




すると、なぜかルーベンが戻ってきた。




ジンジャーエール忘れてた。




と、キッチンに置いてあるジンジャーエールを取りそしてまた自分の部屋に帰った。




なんなんだ? あいつは。




クレソンはシャワーを浴びて、体を拭き、歯磨きしてベッドに横たわる。




クレソンの頭の中はこうだ。




「これこそベッドのひと時だ、本物のひと時だ」




すぐにスヤスヤとクレソンは寝てしまった。




次の朝に身の毛立つ事があることも知らず、気持ち良さそうに寝ていた。


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