第68話 最終決戦


 俺とアイリの目の前には、巨大なドラゴンが2体いる。

 どちらも老齢のドラゴンで、鱗はひどく傷ついている。

 だがどちらからのすさまじいエネルギーを感じる。

 

「トカゲじゃと……? 誰に向かってそのようなことを言っておる……!」


 目の前のドラゴンは、俺に向かって吠える。


「俺にはあんたらなんか図体のでかいだけのトカゲに見えるけどね」

「ふん、小僧が。ほざけ。貴様なんぞ始龍になったばかりの赤子ではないか……! ひねりつぶしてくれるわ」

「だったら、あんたらは滅びかけのジジイだな」

「なんだとおおおおお!!!!」


 そこから戦いが始まった。

 戦いはどれだけ続いたのか、自分でもよくわからない。

 何度も攻防が繰り返された。

 一瞬の出来事のようにも感じられるし、100年ほど経ったような気もする。


 戦況は、俺とアイリが押していた。

 混沌龍たちとアイリの2対1のときで互角の勝負だったから、俺が加わればこちらが優勢になるのは当然だ。

 だったら、アイリも最初から俺を頼ってくれればよかったのにな……。

 自分の事情に俺を巻き込みたくなっていう、アイリなりの信念なのかもしれない。

 だけど、俺はとうの昔に巻き込まれてるっつーの。

 俺はアイリがどこに消えても、地の果てまで探しにいく。

 だってアイリは、俺にとって唯一の家族だから。


「グオオオオオ!!!! そろそろ終わりにしよう。死ぬがよい、調和の龍よ……!」

「死ぬのはてめえらだ……!」

「これが最後の攻撃だ……! みせてやろう、本物のドラゴンブレスを……!」


 混沌の始龍たちは、大きく息を吸い込んだ。

 そして、ドラゴンブレスを繰り出す。


 ――ゴオオオオオオオオ!!!!

 

 そんじょそこいらの威力じゃない、始龍から繰り出される、ほんもののドラゴンブレスだ。

 そのすさまじいエネルギーを、俺は真っ向から受け止める。

 俺は逃げやしない。

 俺は片手でドラゴンブレスを受け止め、それを受け流す。


「うおおおおおおおおおお!!!!」

「なんだと……!? 貴様、なぜ我々のドラゴンブレスを喰らって、無事でいられる……!?」


 本来なら、俺がいくら強くても、ドラゴンブレスなんか喰らったらひとたまりもないだろう。

 だけど、こんなの俺にとってはくしゃみ程度にしか感じないね。

 なんせ、俺は子供のころから、アイリのドラゴンブレスを喰らってっからなぁ……!!!!

 こちとら寝相の悪いアイリのドラゴンブレスを死にそうになりながら受け流して、風邪ひいたときのアイリのくしゃみドラゴンブレスを死にそうになりながら受け流して……そうやって育ってきたんだ。

 始龍に育てられた俺を、あまりなめんじゃねえ……!


「家庭の事情でね。ドラゴンブレスなら、子供のころから死ぬほど浴びて育ってんだわ……!!!!」

「なんだとぉ……!?」

「アイリ……俺たちの本物のドラゴンブレス、見せてやろうぜ……!」


 俺は横にいるアイリに呼びかける。


「ああ……レル……! 私たちの愛の力を……!」


 俺たちは同時に息を吸い込んだ。

 

「「ドラゴンブレス――!!!!」」


 ――ゴオオオオオオオオ!!!!


 俺とアイリの波長が合うのか、俺たちのドラゴンブレスは明らかに通常のものよりも大きな威力だった。

 二匹の混沌の始龍はドラゴンブレスに飲み込まれる。


「ぐおおおおおお……!? なんだこの威力は……!?」

「これが俺たちの、愛の力だ……!」


 一つ一つの力は小さくても、力は合わせると何倍にも膨れ上がる。

 そして、愛するもの同士が合わせた力は、通常のそれよりも何倍もの威力になる……!

 俺たちのドラゴンブレスは、混じり合い、究極のドラゴンブレスとなった。


「ぐあああああああ!!!! 我々の力が……! 消える……! 死にたくない……!!!!」


 混沌の龍たちは、ドラゴンブレスに飲み込まれ、跡形もなく消えていった。


「ふぅ……これで、本当に終わりなのか……?」

「ああ、私たちはやったんだ。レル……お前のおかげだよ……。ありがとう」

「アイリ……」

「さあ、方は着いた。帰ろう」


 俺とアイリは人間の姿に戻る。

 そして手を繋いで、地面へと降り立つ。

 

「そうだな。そうだ、俺、仲間と来たんだ。みんな待ってるぜ」

「そうか、レル……。お前にも仲間ができたんだな……」

「ああ、ここまで来るのに大変だったんだぜ、ほんとに。アイリが勝手に出ていくからよ」

「すまん…………お前を巻き込むわけにはいかなかったのだ」

「頼ってくれよな。俺たち、家族じゃんか」

「ああ、そうだな……。お前がいなければ、私はまた負けていたかもしれん……。お前のおかげだ」

「さあ、いこう。俺の仲間を紹介するよ。アイリに会わせたいんだ。みんなも、アイリに会いたがってる」

「な、なんだか恥ずかしいな……」

「大丈夫大丈夫」


 俺たちは、みんなの元へと戻っていった。

 





=============

【あとがき】


お久しぶりです。

もう少しで完結まで駆け抜けられそうです。

お付き合いよろしくお願いいたします。


さて、


カクヨムコン9がはじまりました。

ぜひ応援のほどよろしくお願いいたします。


また、新連載もはじめました。

ぜひこちらも読みにきてください。


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過労死した社畜OL、ゲーム内のエルフに転生して無限の寿命とチートクラフトを手に入れたので今度こそ自由に生きたい!~趣味にものつくりに、のんびり森で【もふもふ】と【スローライフ】な日常を希望します~


https://kakuyomu.jp/works/16817330667619768385

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