第64話 歓迎


「し、失礼いたしましたああああああああああああ!!!!」

「えぇ…………」


 村長は俺にスライディング土下座を決めた。


「まさか始龍様の眷属の方だったとは知らず……申し訳ございません……」

「いや、わかってもらえればいいんだ」


 そして、俺が竜王だと説明すると――。


「あ、あなた様は竜王様であらせられる……! それは失礼いたしました! おいみなのもの、竜王様御一行をおもてなししろ!」

「えぇ……」


 村長の鶴の一声で、竜人族の里は一気に歓迎ムードになった。

 さっきまで俺たちを警戒してか、家の中に引きこもっていた村人たちが、一斉に外に出てきた。

 そしてなにやら宴の準備が始まる。


「あの村長さん、俺別にここまでしろとは言ってないんだけど……」

「いえ、これは絶対です。竜王様を冷遇したとあっては、始龍神さまに殺されてしまいます」

「えぇ……そうなの……?」


 なんかよくわからんが、とにかくもてなしてくれるというのだから、好きにさせよう。

 すぐに宴会の準備がととのって、俺たちは中央の一番いい席に座らせられる。


「さあ、外の世界からはるばるいらっしゃった竜王さまを歓迎しましょう! ほら、この大陸でしかとれない食べ物を集めさせました」

「おお……! これは……!」


 そこに並べられていたのは、どれも確かに見たことのない食材ばかりだった。

 大魔境にも存在しないような、正真正銘幻の食材。きっと暗黒大陸にしか存在しないんだろう。


「これはすごい……美味い!」

「うむ、なかなかいけるな……!」


 カンナも満足そうだ。

 俺たちはものすごい歓迎を受けた。

 踊り子たちが竜の舞を披露するのをみながら、絶品料理に舌鼓を打った。


 俺の周りには竜人族の里屈指の美人たちが集められ、もてなしてくれる。

 ていうか、誘惑してきた……。


「竜王さまぁん。私にぜひ子種をくださいませ」

「いえ、私に……!」


 まったく、俺はそんなつもりでここまで来たんじゃないけどな……。

 まあ、そうまでいうなら、後で抱いてやるか……。


「はは……なかなかいい里だな……」


 酒によいしれながら、夢見心地を過ごす。

 宴もたけなわとなったころ、村長が再び真剣な顔で俺に切り出した。


「それで、竜王様は、始龍さまを探してここまでやってこられたのですよね……?」

「ああ、なにか知らないか?」


 もしかしたら、アイリもこの里に寄ったかもしれない。

 だが、その期待は違っていた。


「すみません……これという手がかりというものは……。なにせ、我々竜人族からすれば、竜王様は雲の上の存在。さらに上の存在である始龍様のことなど……まったく知るすべもなく……もうしわけありません、力になれずに」

「いや、いいんだ。まあ、アイリのことだろうし、そんなことだろうとは思ったけど……」


 アイリはいったいなんのつもりで暗黒大陸にまできたのだろう。

 っていうか、もともと暗黒大陸にいたのか……?

 アイリは俺に見つけてもらいたいと思っているのだろうか、それとも、俺とはもう会いたくないのだろうか……?

 いや、考えるのはよそう。

 どっちにしろ、俺はアイリを探すだけだ。

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