第63話 竜人族の里


 モンスターたちを振り切り、やっとの思いで竜人族の里までたどり着く。


「ここが竜人族の里かぁ……」


 一見なんの変哲もない村だが、はてさて。

 龍の精霊は里につくと、いつのまにかいなくなっていた。

 俺たちが中に入っていくと、村長らしき人物が出迎えてくれた。

 竜人族は、一見して人間とさほど変わりないが、頭に角が生えていて、尻尾も生えている。


「おやおや、お客さんですかな」

「ああ、龍の精霊に案内されてきた」

「さようですか。なに、立ち話もなんですので、ぜひ私のうちにいらしてください」

「それはどうも」


 俺たちは厚意に甘えて、村長の家にいくことにした。

 村長の家は広かった。


「それで、あなた方はどこからいらしたのですか?」

「俺たちは、フォスフォフィライト湖の中にある大陸から来た」

「なに……!? そんなところからはるばると……」

「実は、ドラゴンを探していてな、それでここまできたんだ」


 俺がそう言うと、村長の顔つきが神妙なものに変わった。

 なにか警戒されるようなことを言っただろうか。


「ドラゴンを探して……ですか、まさかドラゴンを狩ろうというのではありませんね?」

「いやいや、そんなわけない。知り合いなんだ」

「ほう、ドラゴンとお知り合い……? 差支えなければ、そのドラゴンのお名前をおききできますかな?」

「ああ、アイリという始龍なんだが――」


 俺がアイリの名前を出すと、村長の顔つきがさらに変わった。

 まるで神の怒りにでも触れたかのように、村長の態度が豹変する。

 村長は立ち上がり、


「始龍様のお名前を気軽に口にするなど! とんでもない! この痴れ者め!」

「えぇ……」

「おい! 誰かこやつらを追い出せ!」

「えぇ……」


 なにかそんなにいけないことだったのだろうか。

 始龍の名前は、竜人族の中ではなかばタブーのようになっているらしい。

 それほどまでにドラゴンのことを崇拝しているのだ。


「ちょ、ちょっとまってくれ……誤解だ……! 俺とアイリは……!」

「まだいうか! この!」


 村長は俺のことを、ドンと突飛ばそうとしてきた。

 しかし村長が俺に触れた瞬間、逆に村長のほうが吹き飛んでしまう。


 ――キィン!


「ぎゃああああああああ!!!?!?」


 なんだ……!?

 どうやら村長が触れた瞬間、俺の龍の紋章が反応したらしい。

 竜人族が俺に触れたから、反応したのだろうか。

 敵意を感じ取って、龍の紋章が勝手に発動したみたいだ。

 村長は壁にうちつけられて、その場に倒れた。

 そして村長は恐れおののいた顔で、俺の龍の紋章を見つめた。


「ま、まさかそれは……龍の紋章……!?」

「ああ、そうだが……知っているのか……?」

「し、しかもそれは……! 始龍の紋章ではありませんか……!?」

「ああ、アイリからもらったものだ」


 俺がそう言うと、村長は血相を変えて、土下座した。


「し、失礼いたしましたああああああああああああ!!!!」

「えぇ…………」

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