第60話 断崖絶壁
暗黒大陸の植生は、意外なことにも俺の故郷、大魔境にそっくりだった。
サイズ感などは違うが、レアアイテムがゴロゴロあったり、危険生物がうようよいたりと、どこからどこまでも大魔境に似ている。
これはなにを意味するのだろうか……。
暗黒大陸と、俺たちの住んでいた大魔境になにかつながりがあるのだろうか。
なにか重大な秘密が隠れている気がするのだが……。まあいい。
とりあえず俺たちは森の中をどんどん進んだ。
ある程度までいったところで、サテナが難しい顔をして言った。
「うーん、この先はちょっと厳しいかもだね」
「どうしてだ……?」
「実は、ここら辺までは、前にも調査団がきたことがあるんだ。だけど、こっから先は誰もまだ行けていない……正真正銘の未踏の土地なんだ」
「なんだそんなことか。俺なら大丈夫だ」
「それが……そうもいかないかもなんだよね……」
「…………?」
「ま、いってみればわかるよ」
サテナの意味深な言葉に首をかしげながらも、俺たちはいけるところまで歩をすすめた。
そこにたどり着いて、ようやくさっきの意味がわかる。
「なんだこれは……」
そこは断崖絶壁になっていた。それもただの断崖絶壁ではない。
どこまでも続く、向こう岸が見えないほどの大きな亀裂。
横にもどこまで続いているかわからない。もしかして、この亀裂はフォスフォフィライト湖全体を一周しているのか……?
だとしたら、とんでもない構造だぞ。
しかも、崖の下からは強風が吹いている。
とてもじゃないが、この断崖絶壁を飛び越えて向こうに渡るなんてのは無理そうだ。
ためしに近くまで連れてきていたトカゲを呼んでみるも、トカゲは崖を一目見るとぶんぶんと首をふった。
これは物理的に、人間の力でどうこう渡れるようなものじゃない。
空を飛んで渡ろうにも、強風で落とされる。
「どうしたらいいんだ……」
「ほらね……? 実際、ここまではまだ暗黒大陸の序章みたいなものなのかもしれないね。こっから先が、真に暗黒に包まれている、謎の土地なんだ……」
「でも、きっとアイリはこの向こうに……」
俺にはなんだかそんな気がしていた。
そして、アイリが渡ったのなら、なにか方法があるはずだ。
さすがのアイリも、この強風の上を飛んで渡るのは不可能だろう。
だとしたら、他にどんな方法がある……?
考えろ……考えろ……。
「そうか……!」
「なにか思いついたの?」
「ああ……」
サテナに言われて、俺は自分の足元を指さした。
「下……?」
「ああ、下だ。上じゃなくて、下からいけばいいんだ……!」
「ど、どういうこと……!?」
「この断崖絶壁を下る。そして、底まで降りて、もう一度反対側の壁を上るんだ」
「そ、そんな……無茶な……!?」
俺も自分でどうかしてると思う。だけど、他に道はない。
「でも、もし底なしの崖だったらどうするの……? なにもない空間に落とされるだけだよ……!?」
「は……? それはないだろう。少なくとも、反対側に出るはずだ」
「反対側……? ちょっと待って……どういうこと……?」
「え……? この世界は球体だから、地面に向かって進めば最後は、地球の反対側に出るだろ?」
俺がそう言うと、サテナは初めてきいたことかのように目を丸くして驚いた。
「そんな話……きいたことない。地面の下にはなにもない空間が広がっているはずでしょう……? この世界が球体だなんて……ありえない。私の理解では、この世は平面の皿の上に乗っているはずだけど……」
「そうなのか……? 俺はアイリから球体だときいているがな……?」
そしてアイリがそういってたということは、間違いない。
この世界は球体だ。
だから、この断崖絶壁を下っていけば、地球の裏側に着くはずだ。
「よし……! 俺はいくぜ……!」
「あ、ちょっとまって!」
サテナもどうしても俺たちに着いてくるようだ。
それだけサテナのドラゴンに対する好奇心はすさまじい。
俺は何度も危険だから、ブートキャンプで待っていてもいいと言ったが、きかなかった。
俺とカンナでサテナをはさむようにして、断崖に飛び込むことにした。
「じゃあ、準備はいいか……?」
「う、うん……!」
俺たちは意を決して、断崖絶壁に飛び込んだ!
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