第49話 ティナVSジュナス


「今度はこっちから行きます……!」


 次はティナがジュナスに斬りかかる。

 ティナはあらかじめ剣に火をまとい、炎の剣で攻撃する。

 しかしジュナスも負けてはいない。ジュナスはとっさに氷の盾を作ると、それでガードした。


「ほう……無詠唱か、やるな」


 俺が教えたわけでもないのに、大したもんだ。一般の生徒で無詠唱で魔法が放てるものはかなり限られてくるだろう。夕暮れチームが3年のエリート集団だというのは本当らしい。

 しかしジュナスの氷の盾は、一瞬で砕け散ってしまう。さすがに炎の剣の前では無力か。


「甘い……!」

「なに……!?」


 ジュナスは砕けた氷の盾を、そのままティナに投げつけた。

 氷の盾は半分溶けて水になっていたので、そのままティナに水がぶちまけられる形になる。

 ――シュウ。

 ティナの剣に灯っていた炎が、今の水でかきけされてしまった。

 なるほど、氷は解ければ水になる。そして水は炎に強い。水魔法が使えなくても、氷をこうやってつかえば対抗できるというわけか。考えたな。だがしかし――。


「甘いのはそっちだ! 剣の炎など、もう一度灯してしまえばいい!」


 ティナはすぐに魔力を練りなおし、剣に炎を灯す。別に炎は魔力が続く限り無限に湧いてくるのだから、一度消火されたところでどうということはないのだ。


「そうくると思ったよ……!」

「なに……!?」


 だがそんなことはジュナスも承知の上だったようだ。ということは、なにか策があるのか。

 ジュナスは氷魔法を発動させた。ジュナスが凍らせたのは――。


「手……!?」

「そうよ……!」


 なんと先ほどティナの腕にかかった水を、そのまま凍らせたのだ。

 さっき氷の盾を投げつけたのは、火を消火するためじゃなく、このためだったのか!

 ティナの腕が凍り付いてしまう。


「っく……」


 あまりの冷たさに、ティナは剣を地面に落としてしまう。

 そこをすかさず、ジュナスは氷で穿つ。

 ジュナスの氷によって、ティナの剣は真っ二つに折れてしまった。


「さあ、これで剣は使えないね……! もらった……!」

「っく……」


 ティナはすかさず氷を炎で溶かし、腕を自由にする。しかし、その腕にはもはや武器を持っていない。

 そこにジュナスの氷の剣が襲い掛かる……!!!!


「氷魔法使いは、そのまま氷の剣で戦える……! だが、炎魔法使いはそうはいかないでしょう!? 炎を手で持つことはできない……! これで終わりよ……!」

「いつ私が炎魔法使いだと言った……?」

「なに……!?」


 そう、別にティナは炎魔法使いというわけではない。あくまで炎魔法がもともとの魔力のクセとして、得意なだけだ。

 俺は、ちゃんと全属性を使えるように指導した。

 ティナはとっさに、剣を魔法で作り出して、それで受け止めた。

 俺が入試でやったのと同じ方法で、ティナは剣を作り出していた。

 そう、魔力を形状変化させ、具現化、そして性質変化させるアレだ。

 もともとティナは剣を具現化させていたのだ。だから、剣を失っても問題はない。

 ティナの剣はもはや、無限にストックのある魔法の剣だった。


「なんだと……!? 無から剣を生み出した……!?」

「これは魔力の剣……! 私から剣を奪うことはできない……!」


 二人は剣で打ち合いを始めた。

 今のところ剣の腕はほぼ互角といったところか。

 さて、そろそろティナには決めてほしいところだな。


「行きますよ……!」「っく……」


 ティナは剣に、今度は雷を纏わせた。

 ――バリバリバリィ!!!!


「なに……!? 炎だけじゃなく、雷もだと……!? 二属性使い……!? ありえない……!」


 ジュナスだけではなく、会場全体が驚き、ざわつき始めた。

 この世界で二つの属性を操るなど、ほぼありえないことらしい。どんだけレベルが低いんだ?

 俺の教えた通り、ティナは全属性魔法を使えるし、魔力の操作も完璧だ。

 これなら俺のチームは勝っていけそうだな。


「これでトドメだ……! うおおおおおおおお!!!!」


 ティナは剣に雷と炎を両方まとわせると、ジュナスに斬ってかかった。

 ジュナスはまた氷の盾で対抗しようとするが……。

 炎と雷の威力に押し切られ、地面に手をついてしまう。


「勝者……! ティナ……!」


「やったぁ……!」


 これにて第一試合は俺たち『ドラゴノイズ』の勝利に終わった。


「やったな、ティナ。すごかったぞ」

「これもレルギア殿のご指導のおかげだ」


 帰ってきたティナと、チームみんなでハイタッチ。

 さて次は、フェリスの出番だ。


「レルギアくん……私、怖いけどやってみます……!」

「おう! 俺が教えたんだから大丈夫だ! 頑張れ……!」

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