第50話 フェリスVSカートン


 次はフェリスの戦う出番だ。相手はカートンと言う名前の3年の男子生徒。

 試合開始のゴングが鳴る。


「次鋒戦、フェリスVSカートン……! はじめ……!」


「いくぞ……!」

「っ……!?」


 カートンは俊敏な動きで、一気に距離を詰めてくる。


「ほう……」


 暗殺者のごとく、足音ひとつたてずに、カートンはフェリスの後ろに回り込んだ。


「癖になってんだ。足音殺して歩くの……家庭の事情でね」


 そしてカートンはフェリスに思い切り、手刀を喰らわせた。

 ――ドン!


「恐ろしく早い手刀……俺でなきゃ見逃しちゃうね」


 これには俺も驚いた。さすがは3年のエリート集団だ。

 フェリスは急な攻撃に、一瞬ふらっとしたようだが、なんとか正気を保っている。


「なに……!? この僕の手刀を喰らってまともに立っているだと……!?」

「平気です……。とっさに首を魔力でガードしましたから……」

「なんだと……!? そんな高度なことが……!?」


 フェリスにも、基礎の魔力操作は教え込んである。

 魔力を体の部位にまとわせてガードすることくらい、たやすいことだ。

 今回は相手が早すぎて、ギリギリだったがな……。

 だがフェリスは魔力の体内移動がとてもはやく、得意だった。

 今回はそのフェリスの才能が活きたな。ティナがカートンと当たっていれば、今のでやられていたかもしれない。

 相手のカートンとかいう男、そうとうのやり手だ。

 だが……もうその手はフェリスには通用しないぞ?


「っち……まあいい、本番はこれからだ」

「もう、あなたの攻撃は見切りました。ここからは反撃します」

「なに……!? ふん、馬鹿な。僕の高速移動の光魔法を見切れたものなどいない……!」


 なるほど、カートンのあの人間離れした移動速度は光魔法の応用現象か。そこまで魔法を自由自在に操れるとは、なかなかやるじゃないか。

 だが、フェリスは俺が鍛えたから、もっと上だぞ?


「くらえ……! シャイニングフォース!!!!」


 カートンは光魔法を体にまとって、光速で自分を独楽コマのようにして体当たりをしかけてくる。

 しかし、それをフェリスは見事にかわしてみせた。というか、フェリスのほうが早い。


「なに……!? 僕の攻撃をよけただと……!?」


 フェリスは目に魔力を集中させ、動体視力を最高レベルまであげていた。

 今のフェリスに見切れない攻撃はない。

 そして、足に魔力を集中させ、高速回避。

 魔力を本当に自由自在に操るとは、こういうことだ。

 相手は小手先の光魔法でしか対応できないみたいだがな。


「今度はこっちから行きますよ……!」

「っく……!」

「光の矢……!!!!」

「なに!? そっちも光魔法だと……!?」


 当然、フェリスは光魔法だけじゃなく、全属性の魔法が使える。

 今回光魔法を使ったのは、相手が高速移動できるからだろう。

 相手が高速移動できるなら、こちらはそれ以上の速さで仕留めればいいだけの話だ。

 フェリスの放った光の矢は、ものすごいスピードでカートンを貫いた……!!!!


「ぐわああああああああああ!!!!」


「そ、そこまで……!!!!」


 カートンの腕が矢で貫かれ、出血する。

 これ以上は危険と判断したのか、審判がフェリスの勝利を宣言した。


「すごい……! 私でも勝つことができました……! レルギアくんのおかげです!」

「はは、フェリスの才能があったからさ」


 ここまで順調に勝ってきて、あと1勝。

 あと1勝すれば俺たちの勝ちだ。

 そしてこのチームに勝てさえすれば、実質の校内優勝みたいなもんだ。

 あとはライゼだけだが……。

 まあライゼは俺の生徒の中でもひときわ優秀だ。

 なにも心配はいらないだろう。

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