第23話 召喚?なんとかなるだろ。知らんけど。


 魔法の試験は余裕だ。

 そう高をくくっていた俺だったが……。

 なんと、魔法は魔法でも、今回の実技試験は召喚魔法が課題とのことだった。


「召喚魔法かぁ……そういえば、ろくにやったことないな。まあ、なんとかなるだろ」


 受験生は順番に呼ばれて、召喚魔法を披露する。

 みんな自分があらかじめ契約してあった魔物がいるようで、それを召喚しているみたいだ。

 困ったな。俺にはそういった契約魔物の類はいない。

 正直、俺が自分で戦えばそれで負けるわけがないので、俺には召喚魔法なんてのは不要だったんだ。

 だから今までに、手を出そうとも思わなかった。


「次、レルギア=フォスフォフィライトくん。召喚獣を見せなさい」


 俺の番になって、名前が呼ばれる。俺は前に出て、注目を浴びる。

 しょうがない、とにかくなにか魔物を出せばいいんだろう?

 俺は剣を作ったのと同じ要領で、魔力の具現化と性質変化を行った。

 自分の身体に魔力を大量に纏わせ、それを変化させていく。

 俺はあっという間にドラゴンの姿に変身した。

 ドラゴンの姿はアイリのドラゴンフォルムの状態のときを参考にした。


「これでいいだろうか?」


 ドラゴン化した俺は、上空から試験官に呼びかける。


「そ、そんな……!? ど、ドラゴン……!? まさか君は、ドラゴンだったのか……!?」

「いや。ただ魔力の性質変化をしただけだ」


 俺は一瞬で、元の姿に戻って見せた。


「す……すごすぎる……。いったいどういう仕組みなんだ……。魔法科学を教えている私でもさっぱりわからん……」


 試験官はしばらく本心状態だった。

 だが正気をとりもどすと、


「……って、これは召喚魔法の試験ですよ!? そ、そんなインチキ魔法は認めません!」

「やっぱりだめか……でも召喚魔法なんて使ったことないしなぁ」

「で、では今回の試験は失格ですね?」

「ちょっと待ってくれ。ここに魔物か魔獣を呼べばいいんだよな?」

「ええそうです。もう一度チャンスをあげましょう。ですが、さっきみたいな魔力でのごり押しはなしですよ?」

「よし」


 俺には召喚魔法の使い方はわからない。

 だが、魔獣をここに呼ぶことならできる。

 俺はいつもトカゲを呼ぶ要領で、魔力を飛ばした。


「ロゼ! トカゲ一号!」


 俺の魔力を受け取って、家からロゼが一瞬で駆け付けた。

 トカゲも、近くに待機していたから、すぐに飛んできた。

 こいつらは別に契約魔法で結ばれた召喚獣ってわけじゃないけど、まあ呼べば来るからこれでもいいだろ。

 召喚魔法とは言えないが、ようは同じようなことだ。

 やってきた二匹を見た試験官は、幽霊を見たような顔で驚いて、腰を抜かした。


「な、ななななな……!? ふぇ、フェンリルと本物のドラゴンんんんん……!?!?!?」

「いや、犬とトカゲだけど……」


 俺は自分で言ってて、気づく。


「あ、そっか。犬とトカゲは魔獣とは言えないか」


 やばい、このままだとまた失格って言われてしまう。

 たしかにロゼもトカゲも魔法は使えるし、魔獣とは一応言えるかもだが……。

 もっと魔力の高いやつを呼ばなきゃだな。


「おい、カンナ!」

「なんじゃ?」


 俺は別の試験官のもとで試験を受けていたカンナを、この場に呼び出した。


「ど、どういうことです……? 他の受験生を呼び出した……?」

「あ、うん。こいつ魔王だから。魔王を召喚したってことで合格にしてくんない?」

「は、はぁ……?」


 魔獣を召喚するより、魔王召喚のほうがたぶん点は上だろ?

 魔の王ってんだから、魔王も一応モンスター扱いにならない?


「そ、そんなのが通用するわけないでしょう!」

「やっぱだめか……」


 この試験官は融通が利かないな……。


「さっきから君はなんなんです! 私をからかっているのですか!? 召喚魔法は使えるのか使えないのか! 使えないなら、本当にこのまま失格にしますよ!?」

「むぅ……」


 でもなぁ、俺は召喚魔法使えないし……。困った。

 すると、俺のそんなようすを見てカンナが、


「なんじゃ。お前召喚魔法が使えぬのか?」

「ああ、カンナ。やり方知ってるか?」

「よかろう、ちょいと教えてやろう」


 お、ラッキーだ。カンナを呼び出しておいてよかった。

 でも、試験中に他の受験生に助言をもらってもいいのかな?

 一応、試験官のほうを見る。


「ふん、もう勝手にしなさい。そんな付け焼刃でどうこうなるものではないですからね。契約していない魔物を召喚魔法で呼び出すのは至難の技。初めて召喚魔法を使うのに、まともに使えるわけないですから」

「そうか。じゃあ遠慮なく」


 俺は一瞬でカンナから召喚魔法のやり方をレクチャーしてもらう。

 話をきけばなんとも簡単なことで、今すぐにでもできそうだった。

 普通の魔法の応用で全然できるレベルのことだな。


「よし、初めての召喚だ。あまねく有象無象の魔の民どもよ、我が召喚に応えたまえ――!!!! なんか出ろ……!!!!」


 俺は虚空に向けて、召喚魔法を放った。

 とりあえず、呼び出すのはなるべく魔力の高い魔物がいい。

 特に魔物の種類とかは想像せずに、とりあえずデカい魔力を思い浮かべた。

 すると、出てきたのは――。


「ギュオオオオオオオオオオ!!!!」

「べ、べへモス……!?!?!?!」


 試験官がまたまた後ろにひっくりかえって驚いた。

 俺が召喚したのは、超巨大なべへモスだった。

 べへモスはあまりにもデカすぎて、軽く試験会場の建物を破壊してしまう。

 幸い、今はみんな実技試験で外にいるので、けが人はいないようだ。


「そ、そんな……初めての召喚魔法でべへモスを……!?!?!!」


 試験官はあまりにもの驚きで、そのまま失神してしまった。


「あのー、俺、合格なの?」


 あとから目が覚めた試験官によると、俺は満点でのトップ通過らしい。

 ちなみに、カンナは魔王軍幹部のサタンを召喚して、別の試験官たちを震え上がらせたらしい。

 べへモスは帰れと言っても帰らなかったので、俺が瞬殺しておいた。

 召喚しておいて倒すのもなんだかという感じだが、暴れられるよりはまあいいだろう。

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