第16話 だが、絶対俺の子を孕ませる!


「それで、神殿に行かず城に戻ってきたということは、どういうことなのだ?」


 王はライゼにそう切り出す。

 本来の予定であれば、今頃ライゼは神殿に行って聖女として平和の祈りをささげていたはずだ。

 その神殿やら聖女やらってのがどれほどの効果があるのかは、俺は知らないけどな。

 宗教事には疎い。


「じ、実は……」


 そのときだった。

 一人の兵士が部屋まで駆け込んできて言った。


「王様! 報告いたします! たった今、魔王軍が全軍、撤退していきました!」

「は……!? な、なんじゃと!?」


 俺やライゼが魔王軍との取り決めについて説明する前に、どうやら事は済んだようだ。

 報告に眉一つ動かさなかった俺やライゼたちを見て、王はなにかを察したようで。


「これも……レルギア殿のお力によるものか……?」

「まあ、そうだな。魔王と話した」


 俺の言った言葉を、王も兵士も理解不能と言う顔で受け止めた。


「ま、魔王と話した……? じゃと……?」

「ああ、軽い友達なんだ。魔王は別に人類をどうこうする気はないってさ」

「し、しかし……現に魔王は……」

「表立って魔王を名乗ってたのは暴走した部下らしい。そいつは今頃、もうミンチになっているだろうぜ」

「そ、そうであったか……」


 王はいまだに驚きと困惑を隠せないようすだ。

 娘を危険な旅に行かせるほどの危機が、一瞬にして去ったのだから、まあ当然だ。


「魔王をも従えるとは……さすがはレルギア殿。王として、なんと申したらよいか……」

「いや、別に従えてはないけどな」

「ローゼンベルク王として、娘や国……いや、世界を救ってくださったレルギア殿に、ぜひお礼をしたのですが……。いかんせん、なにも大したことはできぬものでな……すまない」

「いや、お礼ならもう貰ってるからいいよ」

「は……?」


 俺はライゼとティナの間に入って、彼女たちの腰に手をまわした。

 両手に華だ。


「この二人が俺の嫁になるんで。俺はそれで充分かな」

「は……はい? そ、そそそそのようなことが?」


 王は目を丸くしながら、ライゼにそう問うた。

 ライゼが俺の嫁になることに反対というわけではなさそうだ。

 ただただ、いきなりな事だから困惑しているだけみたいだな。


「はいお父様。私もぜひレルギア様のお嫁さんにと。それで承知しました」

「そうか。ライゼ、お前がいいなら問題はない。私も、レルギア殿ほどのお人ならば安心です。いや、むしろ救国の英雄であるレルギア殿とライゼが結ばれるなら、これ以上ないことですな」


 よかった。王も賛成してくれるみたいだ。

 魔王軍の危機も去った、そしてライゼの暗殺も防いだ。

 神殿へはもう行かなくてもいいし、これで完璧にこの国は平和ってわけだ。

 まあ、まだまだライゼを狙うやつは出てくるかもしれないけどな。

 姫という立場上、暗殺はつきものだ。

 だがそれは俺がなにがあっても守ればいいだけのことだけど。

 とりあえず、今は親公認の仲になれたことを喜ぼう。


「よし、じゃあさっそく交尾するか!」


 俺はライゼとティナのケツをわしづかみにする。

 二人は「ひゃん♡」とかわいらしい声をあげて反応した。

 ようやくと思っていたところに、異論を唱えたのは王だった。


「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

「ん……?」

「い、いくらレルギア殿といっても、それはちょっと待ってもらいたいのだ……」

「マジか……まだ一揉みもしてないのに……」


 俺はわかりやすく落胆する。

 あ、でもライゼがダメってだけでティナならいいのかも?

 王は続ける。


「ライゼはまだ学校に通っている、学生の身。その……できればそういったことは、ライゼが学校を出るまでは待ってもらいたいのだ」

「なるほど? そういうことか……」


 その学校とやらがどのくらい重要なのか、俺にはよくわからないが、妊娠するとまずいのだということはわかった。


「わかった。じゃあ学校が終わるまでは待とう。だが、いずれは絶対に俺の子を孕ませるからな!」

「それはもちろんです。レルギア殿との優秀な子を、楽しみにしておりますぞ。ゆくゆくはこの国の王子となるのだから……」

「あ、そっか。まあ俺が国を継ぐとかじゃなければなんでもいいや」


 俺には国がどうとかはよくわからないからな。

 それに、しがらみは面倒だ。

 だが俺の子が国を継ぐっていうなら、まあ好きにすればいいかな。


「じゃあそれまで、先にティナを孕ませるか」


 俺がティナを抱きしめたその瞬間、今度はライゼが異議を唱えた。


「待ってくださいレルギア様! そんな、私だけお預けでティナだけなんてずるいです! 我慢できません!」

「えぇ……じゃあティナともお預けか……」

「すみません……でも、避妊していただければ、私は大丈夫ですから……」

「あ、そっか。避妊スキルを使えばいいのか」


 だけど、やっぱり交尾は孕む可能性のある本気交尾に限る。

 それは学校が終わるまで我慢だが、とりあえず今は避妊ありでも楽しもう。


「そういうわけで、じゃあさっそく寝室にいくか。ライゼの部屋を案内してくれ」

「わ、私の部屋でするんですか……!? 恥ずかしい……」

「いいじゃん。ライゼの部屋みたいし」

「わ、わかりました……。やさしく……してくださいね?」

「おうもちろんだ」


 俺はライゼとティナを連れて寝室へと向かった。

 避妊さえすれば、王も特に異論はないという。

 避妊スキルを使うために、スキルスロットを1つ消費した。

 これで残りのスキルスロットは2つだ。

 念のためにスキルスロットを空けておいて本当によかった。

 学校が終わったら、俺は絶対にこの二人を孕ませるのだと、強く決意して、抱いた。

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