第13話 じゃあさっそく子作りしよう


「よし、じゃあさっそく子作りをしよう!」

「へ……? ちょ、ちょっと待ってください!」


 ライゼは顔に手を当てて、あたふたし始めた。可愛い。


「だって、嫁になるってことはそういうことも当然するだろ?」

「そ、そうですけど……それにしたっていきなりすぎます!」


 ティナも俺を止めようとしてくる。

 俺はまた何か変なことを言ったのだろうか?

 気になった女はすぐに抱いて自分のものにしろ、とアイリがよく言っていた。

 そうしないと、貴重な雌を他の雄に奪われてしまうからだそうだ。

 俺には世界中の女を孕ませることのできるポテンシャルがあるとも言っていたな。

 アイリの言うことに間違いはないから、俺はさっそく抱こうとしただけなんだがな?


「そうだぞ! 相手は姫なんだ! それに、私も……もっと雰囲気とか順序をだな……」

「そういうもんなのか? アイリとは獣のようにしたいときにしていたが……」

「アイリ殿が何者かは知らないが、それは普通じゃないからな!? まったく、レルギア殿には常識がことごとく通じないな……」

「す、すまん……」


 やはり俺の常識は根本からずれてしまっているようだ。

 昔は俺もそうじゃなかったはずなんだがな……。

 むしろアイリに俺がツッコミを入れる側だった。

 しかし、アイリと長く暮らしすぎたせいで、俺も浮世の常識を忘れてしまったようだ。


「と、とりあえず……結婚の話の前に、まずはお城に戻って父上にいろいろと状況を説明してもよろしいでしょうか?」

「そ、そうですね。姫様の言う通りだ。魔王と和平を結んだことも、報告せねばならないしな」


 たしかに二人の言う通りだな。

 王とやらにも報告しておかないと、また魔王軍とややこしいことになりかねない。

 まあカンナがどうにかしてくれてはいるだろうが、それとこれとは別だ。

 魔王軍から人間へは干渉しないと言っていたが、人間側が魔王軍を攻撃した場合は別だろうからな。


「だが、俺はこの森を離れる気はないぞ……?」

「それは……アイリさんのことですか……?」


 なんと応えようか、俺はしばし逡巡した。


「ああ、アイリが戻ってきたとき、俺がいないとだめだから……」

「その……アイリさんは、戻ってくるんですか……?」

「それは……わからない……」


 悩む俺に、ライゼが意外な提案をしてくる。


「だったら……! こっちから探しにいけばいいじゃないですか!」

「え……?」

「アイリさんという方に、もう一回会いたいのですよね? でしたら、レルギア様がこの森を出て探しにいくのはどうでしょう!」


 その発想は、正直なかった。

 そんな簡単なことも思いつかないくらい、俺はひどく落ち込んでいたのかもな。

 あれから俺は死んだように生きていたから……。

 だけど、ライゼにそう言われると、なんだか希望が持ててきた。


「そ、そうだな……! いつまでもうじうじしていても仕方ない! アイリも、きっと俺にそう言うはずだ! 追いかけてこいってことなのかもな……! よし!」


 アイリが俺を捨てるはずもないんだ。

 いや、もしかしたら俺がショタじゃなくなったことで、俺を捨てたのかもしれないが……。

 さすがのショタコンドラゴンと言えども、そんな理由でどっかにいったりはしないだろう。

 冷静に考えてみると、なにか戻ってこられない事情があるのかもしれない。

 どこかに閉じ込められていて、俺の助けを待っているのかも。


「ようし! そうと決まれば、俺も王都にいくぜ!」

「その意気です! レルギア様!」

「ありがとうな、ライゼ!」

「へ……? ぽ////// ……いえいえ、こちらこそです!」


 ライゼと出会えたおかげで、俺はもう一度こうして立ち直ることができた。

 それには本当に感謝だ。

 やっぱりツラのいい女が近くにいないと、なにをするにもやる気が出ねえ。

 もはや死んだも同然と思っていたが、これで俺ももう一度生きられる!

 なんとしてももう一度アイリに会うために、俺はこの森を出る!

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