第4話 スキルスロット×フルスロットル


 魔法以外にも、アイリはスキルについても教えてくれた。12歳のことだ。

 スキルは魔法と違って、スキルブックからしか会得することができないそうだ。

 スキルブックはスキルの種類にもよるが、かなり貴重なものばかりらしく、一冊でも手に入れるのに苦労するそうだ。

 だけど、アイリはいろんなものを持っていた。

 うちの倉庫には、アイリが長年集めた貴重品が、所狭しと並んでいる。

 その中に、いくつかスキルブックの本棚もあった。


「いいか? レル。あらゆる生物にはスキルスロットというものがある」

「スキルスロット……? なんだそれは」

「ようは、スキルを覚えることができる最大容量のようなものじゃな。魔力がないと魔法を使えないのと似たようなものじゃ。スキルスロットに空きがなければ、いくらスキルブックがあっても新しいスキルは覚えられん」


 俺はそれだけの説明で、なんとなく仕組みを理解した。

 なんだか以前にも似たようなシステムをきいたことがあるような気がする。

 それは、おそらくもう失ってしまった前世の記憶だろうか。

 とにかく、スキルを覚えるにはスキルスロットが必要、ということがわかった。


「それで、そのスキルスロットってのは人によって違うのか?」

「いや、これは魔法とは違って、どんな人間でも、どんな生物でも、数が決まっているのじゃ」

「それは、アイリのような上位種でもか?」

「ああ、納得のいかんことじゃがな。あのトカゲどもと同じだけのスキルスロットしか得られんとは」


 ってことは、魔法は才能と努力の世界だけど、スキルは財力や使い方がものを言いそうだな。

 貴重なスキルブックは貴族に独占されてそうだし、金がないとそもそもスキルを得ることすらできないってことか。


「それで、スキルスロットはいくつある?」

「5つじゃ。どんな生物でも、ほぼ例外なく、な」

「ほぼ……?」


 アイリの言い方に、俺はひっかかりを覚えた。

 それじゃあ、まるで例外が存在するって言ってるようなものじゃないか。


「お前じゃよ。レル」

「は……?」

「その例外というのが、お前じゃ」

「え? ど、どういうことなんだ……?」

「前にも言っておったが、どうやらお前は人生2度目らしいな?」

「ああ、そうみたいだな……記憶はないけど」


 だけど、それがどう関係あるっていうんだ?

 そういえば前に、人生2度目だって話したとき、アイリはすごく驚いてたっけ。

 アイリほど長く生きてて、高位のドラゴンから見ても、俺は珍しい存在なんだそうだ。


「人生2度目というのが原因かはわからんが、お前さんにはどうやら他人の倍のスキルスロットがあるみたいじゃ」

「えぇ……!? そ、そうなのか!?」

「まあ、人生2度目という突拍子もない話をすんなり信じるに至った根拠も、そこにあるの」

「なるほど……。でも、そんなことって、あるんだな……」


 じゃあ、俺は他の生物の倍のスキルを覚えられるってことなのか!?

 それって、めちゃくちゃ最強じゃないか。


「でも、なんで俺のスキルスロットの数を、アイリが知ってるんだ?」

「それはまさしく、スキルによるものじゃ。ほれ」


 アイリはそう言うと、俺に一冊のスキルブックを投げてよこした。

 そのスキルブックには『鑑定』の文字が書かれていた。


「そっか、鑑定スキル……」


 なぜか俺は鑑定スキルという概念をすんなり理解することができた。

 これも、前世の経験によるものなのだろうか。

 自分でも、曖昧だ。

 スキルブックを開いてみると、そこにはスキルについての詳細な説明が書かれていた。

 鑑定スキルをつかうと、人やモンスターならステータスが、物ならそれについての情報が、確認できるようだ。

 ただし、生物への鑑定は、自分より位が下の生物種にしかつかえない制約がある。

 つまり、普通の人間が俺やアイリのステータスを確認することは、できないってことだな。


「鑑定はこの世界でもっとも普及しているスキルブックの一つじゃな。内容が単純なおかげで、スキルブックの複製も容易に行えるのじゃ。ほとんどの商人なんかは、このスキルを覚えておるな」

「へー……でも、貴重なスキルスロットを鑑定に使うのか?」

「まあ、それだけ必須のスキルということじゃ。それに、このスキルはスキルスロットを1つしか消費せん。スキルスロットが10もあるお前さんなら、なおのこと、覚えておいて損はないじゃろ」

「お、そうだな。てか、スキルによって消費するスロット数が違うんだな」

「当然じゃ。強力なスキルほど、消費するスキルスロットも当然、多くなるし、スキルブックも貴重で複雑、かつ複製のしにくいものとなる」


 鑑定スキルをアイリが覚えているのは意外だった。

 ほかの4つの空きスロットには、どんなスキルを覚えているのだろう。


「じゃあ、俺もこの鑑定スキルを覚えるとして……あとの9このスロットにはなにを覚えようか」

「うむ、それについてはこれからじっくり考えるとしよう」

「適当に試しちゃだめなのか?」

「基本的にスキルは一度覚えるとそれっきり、そのスロットを空の状態に戻すことはできない。まあ、方法がないこともないんじゃが……。スキルブックも消費アイテムじゃし、じっくり考えるに越したことはない」

「そっか。じゃあ、一緒に考えてくれ」

「当然じゃ。レルの師匠は我じゃからの」


 俺たちは倉庫の本棚の前で、小一時間議論を交わした。

 まず、覚えるスキルのうち一つは決定している。

 アイリが俺にしか覚えられないスキルだと言って、持ってきたものだ。


「これは?」

「これは我が昔手に入れて、持てあましとったとっておきのスキルブックじゃ。というのも、ちょっと変な代物でな。お前さん以外には、無用の長物じゃ」

「どういうことだ……?」

「このスキルブックは、スキルスロットを6つ使用する」

「は……?」


 たしか、最初の説明では、スキルスロットはどんな強力なスキルでも、最大で5までしか消費しないときかされていたはずだ。

 それも当然、生物に平等に与えられたスキルスロットは、必ず5なのだから。

 5つ以上スキルスロットを消費するようなスキルがあっても、誰も覚えることができない。


「我も使い道が思いつかなくて、倉庫に眠っておったんじゃがな。レルのスキルスロットを見て思い出したんんじゃ。レルなら、このスキルを使いこなせるかもしれん」

「たしかに俺なら、このスキルを覚えても、まだあと3つスロットが残るけど……」


 それにしても、6つもスロットを消費するのか。

 他にもいろいろ覚えてみたいスキルがあったから、それはけっこう痛いな。

 6つも消費するなら、よほど強力なスキルじゃないと割に合わないな。

 そのスキルブックには『創造』とだけ書かれてあった。

 中身を見ても、詳しい説明などは書いていなかった。


「まあでも、俺にしか使えないんなら、使うしかないわな」


 俺は『鑑定』と『創造』のスキルを覚えた。

 これで残りのスロットは3つだ。

 念のため、残りの3つは開けておくことにしよう。

 もしなにかスキルが必要になったときに、空きがないと困るからな。

 幸い俺は常人の2倍のスキルスロットがあるから、3つくらい空けておいてもお釣りがくる。


「さあて、この『創造』ってのはどんなスキルなんだ?」

「まあ、ものは試しじゃ。我も気になる。使ってみるのじゃ」

「おう! 《創造》――!!!!」

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