Psycho/お題:少年の殺人犯/制限時間:15分

6歳の少年が妹を殺した。妹はまだ1歳で、たとえ6歳の子どもでも、首を絞め殺すことは容易だった。刑事は今日、少年を取り調べることになっていた。

「なぜ君は妹を殺したんだい?」

「お母さんが大変そうだったからです」

少年は歳の割に落ち着き払って答えた。事前の情報によれば、事件当時、少年は母親と妹の三人暮らしだった。ようするに、少年の母親はシングルマザーということになる。

「お母さんは忙しかったのかい?」

「僕と妹の世話をして、仕事があって、毎日疲れた顔をしていたんです。それも全部、妹が生まれてからだ。妹がいなければお母さんは大変じゃなくなる」

「……」

利口な子どもだった。6歳にしてはずいぶんとしっかりしていて、大人びていた。取り調べは順調に進み、最終的に母親の苦労を気遣った犯行であった、と結論づけられ、年齢も相まって少年に下された罰はそう重くはなかった。

「大人って馬鹿だなあ」

少年は一人そう呟いた。

「本当のことなんて言うわけないのに。僕はただ気になったんだ。人が死んだらどうなるのか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る