裏社会に転がる不幸と同情と慈愛/お題:闇の帝王/制限時間:15分
「うう……っ、ぐすっ」
日も暮れた夜の街、人気のない路地裏を歩いていた男は誰かがすすり泣く声を耳にした。薄暗い路地にふさわしくない、幼い少女のような声だ。男が声のする方へ向かうと、ほどなくして道の端にうずくまる人影を見つけた。
「嬢ちゃん、こんな時間に何やってんだ?親が心配するぞ」
「う……っ、おうち、帰りたくない……」
少女は顔も上げず、絞り出すように言う。男はしゃがみこみ、少女の顔を覗き込んだ。
「どうしてだ?」
「おかあさん、怖いの……いたい……」
そこで初めて、男は少女の足や腕にあざがあることに気がついた。しばらく黙って考えた後、ポケットから携帯を取り出してどこかへ電話をかける。十数分が経ち、その場に数人の男たちが現れた。
「ボス、ご命令通り手配しました。準備も整っています。ところでその子ども、どうなさるんです?」
ボス、と呼ばれた男は静かに
「俺が育てる」
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